例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

蓄え


 母の衣服はうっかり洗濯籠に放り込めない。必ずポケットに飴だのティッシュペーパーだの、薬だのが入っている。其の衣類を衣装ケースに入れず、適当な籠や箱に目覚まし時計だのデイサービスのお知らせの用紙だの湿布薬だの小銭を入れた袋だの封を切ったお菓子の袋だのと一緒に押し込んでいる。或いは布団の上に無雑作に置いている。そうしているうち毛布についてしまったのだろうか。
 飴のようなべたべたとしたものがついた毛布を洗濯機に入れてみるとなんとか入った。均衡も崩れなかったらしく洗濯機が途中で停止することもなく、玄関脇の丁度いい場所に拡げた毛布に汚れはなかった。
 母は掃除は滅多にしない。父が亡くなり拾数年、浴槽やトイレを壱度も掃除していなかったと知ったときは衝撃だったが(そのくせ実家に行くと掃除機まで持ち出して掃除するのはどう云う心理が働いてのことなのだろうか)、母の物を勝手に掃除したり整理したりしても怒らないのをいいことに、母の物も適当に手を加えるようになった。但し何故かスーパーで貰うビニイル袋を棄てることに対しては文句を言ってくる。弐佰枚も参佰枚も溜め込んでいて然も汚れて使えないものが一緒に入っていても、(壱割残しても)、棄ててしまうのは気に入らないらしい。
 ぶ厚く立派な毛布を干すのも結構たいへんだと言い、ここぞとばかりにあたしはビニイル袋を棄てている。使ってこその蓄え。あとはあたしが決して使わない拾弐袋もある白い砂糖をどうするかだ。

拍手

      郵便箱

   
 内緒で

* メールアドレスは表示されません。