例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

花盛り


 店に苦労しない。其の暮らし易さに通勤時間の苦労をしてまで彼は引っ越し先を今の借家に決めたほどだった。
 川沿いの町に越したなら菜の花を見るにはいいだろうけれど、他に何があるだろう。通販やインターネットでは補えず、季節毎バスに乗り衣類を求めに出掛けなければならないことは目に見えている。

 母がデイサービスに行ってしまうと、地元の野菜が売られている店を覘きに行き、大根とほうれん草と父に供えようと小麦まんじゅうを手に取る。それと花束をふたつ。
 椿にこぶし、ヒヤシンス、水仙、海棠、蝋梅に似たきいろい花、と父の前は随分賑やかなことになった。椿はどうのとか、父はたぶん気にしない。椿を花瓶になどと、自分の町ではできないことだ。そのうち彼の前も同じようになるのだろうか。

 午后、母の家に防犯カメラが設置される。
 脚立に乗り手書きで作動中と記した紙を貼ると、鳥の声が聞こえてきた。

拍手

      郵便箱

   
 内緒で

* メールアドレスは表示されません。