白薔薇
2024, Apr 16
カーネイションは花びらの下の方が茶色になってしまった。数えてひと月以上、一緒にいた。匂いは変わらない。
白いカーネイションに去年の夏を見ていた。或の静かな空間。冷房の利いた壱室で椅子に座り、彼の姿や窓の外の景色を黙って見ていた。言葉は要らなかった。天国の日々とも言えるような或の夏に、弐度と出逢うことはないだろう。
それでも白いカーネイションにいつかまた逢ったなら、家にきてもらおうと想う。
ありがとう、と言い頭を下げて別れた。
今日添えたのは白薔薇だった。白い色が好きで仕様がないと想うけれど、白。惹かれるのは白。
薔薇に匂いは感じられない。反って其れがよかった。薔薇は匂いがあますぎる。小振りな花は瓶にも、隣に置いてある乾燥花のアカシアや薔薇の実とも合っている。
それと大きな苺もひと粒添えた。
開けた窓から鳥の声が入ってくる。
倖せな眠気に襲われる。