例えば秘密のノートに記すように。

       cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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白薔薇


 カーネイションは花びらの下の方が茶色になってしまった。数えてひと月以上、一緒にいた。匂いは変わらない。
 白いカーネイションに去年の夏を見ていた。或の静かな空間。冷房の利いた壱室で椅子に座り、彼の姿や窓の外の景色を黙って見ていた。言葉は要らなかった。天国の日々とも言えるような或の夏に、弐度と出逢うことはないだろう。
 それでも白いカーネイションにいつかまた逢ったなら、家にきてもらおうと想う。
 ありがとう、と言い頭を下げて別れた。

 今日添えたのは白薔薇だった。白い色が好きで仕様がないと想うけれど、白。惹かれるのは白。
 薔薇に匂いは感じられない。反って其れがよかった。薔薇は匂いがあますぎる。小振りな花は瓶にも、隣に置いてある乾燥花のアカシアや薔薇の実とも合っている。
 それと大きな苺もひと粒添えた。

 開けた窓から鳥の声が入ってくる。
 倖せな眠気に襲われる。

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