珊瑚色
2025, Jan 31
塗り絵に夢中になっている母の横で、あたしも塗り絵をするようになった。
握力が弱く、ペンを握る力も弱い。壱枚でも危ういのに、弐枚参枚と重ねてあるカーボン紙にいつも苦戦する。幾度も紙の上を走らせないと色鉛筆の色が乗ってくれない。どれもふわっとした印象になる。
リハビリの為塗り絵を始め数箇月の男性が塗る絵は、技術も個性もあり、まるでプロの作品のような仕上がりで綺麗だ。色の濃さもあたしからしたらずっと濃い。其の色の濃さに憧れつつ、技術はともかく淡い感じも好きと愉しんでいる。
色を置く気になれず、もう鉛筆でしか絵は描けないかと想った。
おとついから花を周りに散らした首から上の女性を塗っている。花は全て珊瑚や櫻貝の色と決めている。こんな感じとても好き、などと想い塗っている。
××ちゃん、ピンク好きだもんねえ、と彼の声が聞こえてくる。ピンクじゃないの、珊瑚とか、もっとやわらかな色だってば、といちいち細かいあたしの返事を彼はもう聞いてなく、××ちゃんの好きな木苺の菓子があったと手招きしているので、足元を這う亀に、珊瑚、と念を押しておいた。