珈琲を淹れようよ。
2024, Apr 18
珈琲豆は残っていたけれど、フィルターが無くなり一緒に豆も買う。桃のような華やかな香りと甘さ、とパッケージに記された文字に既に胸の内に華やかさを感じるものが入り込む。日々の贅沢。他の物なら考えて止してしまうのに、珈琲は許している。
そしてベリィ類。苺に黒すぐり、ブルーべりィに木苺が使われているアイスも弐本買う。
当選券や割引券が届いたと彼はあたしに見せ。壱週間に壱度の割合でコンビニスイーツを買ってくれた。今はコンビニエンスストアに滅多に行くことはなく、スイーツも毎日は食べない。
想えば毎日食べるようになったのは、彼の仕事がリモートになってからだった。一緒に食べるのが愉しかったのだろう。シュークリイムでも何でも、いつも半分にして食べていた。或のふた口み口に意味のない意味があったのだと想う。
料理と言う料理をすることもなくなった台所に置いた卓に、毎日晴れた顔をして座る。彼の選んだふたりでも大きすぎる胡桃の卓が、今ではお気に入り。
彼の部屋の前で扉の隙間から覗くようにして彼に声を掛ける。おはよう。ただいま。おやすみ。珈琲を淹れようよ。
意味のない意味がとても好きだ。