爛漫
2024, Apr 08
寝過ごした朝、捌時に布団を抜け出す。窓が明るい。予報では曇りだったのに陽射しがある。
顔を洗い寝間着から長袖Tシャツに着替え、彼の鳶色のカーディガンを羽織る。肌の色と余り変わらないうす紅のTシャツとカーディガンの色が合っていると想ったとき、カーディガンは彼のものでもあり自分のものにもなった。
今朝は紅茶にする。牛乳の量に対し紅茶葉をかなり多めに入れ煮たところ、それはそれは濃い紅茶ができあがった。
好みの味に促されるようにカメラを手に取る。町中を流れる川沿いの或の道をまだ歩いていない。
染井吉野は身頃を迎えていた。川沿いの細い道を樹木から樹木へ伝って歩く。此の町に越してきてから昨年まで本当に静かな場所だった。座る処はないものの、其れもあって彼とふたり好んで歩いた。
其れが今日は何故か人が多い。すれ違うのさえ容易でない道で少し脇に移ると挨拶をし通り過ぎる人、こちらを先に通そうと待っていてくれる人、に会釈で返す都度上着から彼の欠片を閉じ込めたペンダントが顔を覗かせていた。
夕食はフェットチーネを茹で、自分にバジルソースを彼にうにソースを絡める。
来年も櫻が見れるといいね。初めてそんなことを口にする自分がいた。