深呼吸
2025, Apr 06
集中治療室に入ると、口に当てた酸素吸入器がとれて鼻だけチューブに繋がれた母が目を開けベッドに横たわっていた。声を掛けると口元が動く。何か言いたげだけれど声が弱く聞き取れない。耳を近付け何度目かにやっと聞き取れた言葉に目が点になった。
・・・め。・・・し。
おそらく食事は?とかご飯は?とか言っていたのだろうが、伝わらず終には飯になったのだろう。それにしても口が自由になったからと言い、いきなりご飯を心配するなんて。いとこが、うちの親族は生命力が強いから、と言っていたのも頷ける。
帰りは周り道を土手を歩いた。橋を潜り抜けた処に植えられていた櫻も満開になっていた。来年も観ることができたなら今度はゆっくり観ることにしようね、と彼に語り掛ける。手には途中畑で失敬したつくしが・・・。
帰ると塗り絵の続きをした。仕上げに2Bの鉛筆を使い背景の半分を黒く塗っていく。牡丹の葉にも鉛筆を入れる。塗り絵もだんだん自分の描く絵に近付いてきた。
此の身に春を刻むよう、久々に深く息を吸い込む。