例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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桃のケーキ


 帰省する際降りる駅の出口にあるパン屋をときどき利用していた。きれいな紅色の甘い匂いがした桃のパンがあたしのお気に入りで、店の硝子窓から覗いて桃のパンがあるとわかると立ち寄った。
 桃のパンは或る時期に限り出されていた商品だったのか、暫く見ないと想っていたら店はいつのまにか消えていた。桃のパンの中身は生クリイムと桃のコンポートだった。

 形を残した果実が使われている菓子に弱い。
 「桃のケーキがいろいろできました。」そんな新聞広告を見て、近所の店に買いに行く。いっとう目当てだったケーキはなく、他の弐点を購入する。

 あなたはアイスクリイムと珈琲は毎日でも口にしているけれど余りお菓子は食べないのね、と此の間母に言われ、初めてそうかと気付く。
 彼が家にいるようになり、黙っていても壱週間に壱度はコンビニスイーツが冷蔵庫に入った。一緒に買い物に行けば籠にスナック菓子が入る。そんなふうにして毎日お菓子を食べていた。

 桃のケーキを買ってきたよ、と彼の前に置く。久し振りのしっかりしたおやつの時間。彼が笑っていた。

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