木製の梯子
2025, Mar 14
父の使っていた木製の梯子を玄関の脇に立て掛けていたが、叔父の付けた青いペンキがずっと気になっていた。
先ず埃をかぶった梯子を固く絞った雑巾で拭いていくと、杉板のような焦げ茶の色が現れ驚く。こんな綺麗な姿をしていたのかと想うと、青いペンキの跡がますます汚らしいものに感じられ、叔父のしたことが改めて腹立たしくなった。と言っても屋根のペンキの塗り直しは関係が良好だった頃のことで、好意でしてくれたことだろうからと想ったあとではっとなった。
父が亡くなり此の家と土地を継いだのは母だと叔父は想っているだろう。いとこの継いだ畑のことを考えても、或の頃から此の家を好きに使おうとしていたと云うのもあり得る話ではないか。
拭いたあとはヘラを使いあちこちについたペンキを剥がした。うまくれ剥がれないところには紙やすりをかけた。長い間に左右の長さが違ってしまったが、あとで鋸を使い合わせればいい。但し鋸は叔父が持って行ってしまい家に無い。塵でしかないペンキの空き缶とか使ったあとの汚れた道具ばかりが家に残っている。父ならそんな使い方はしない。
汚れを落とした梯子は色が良く木目も綺麗で想わず撫でてしまう。見上げたあとで、自分でも想っていなかった言葉が口を突いた。これで守り神が元に戻った。汚れを落とした梯子にはそれほどの存在感があり美術品のようにも想えた。