散り椿
2025, Mar 29
仏前に椿を供えるものでないと母が言うので、傍に花瓶を置いているだけで特に仏前でないのだと説明すると納得してくれた。
椿の花は終えるとき花びらを散らすのでなく花ごと落ちるのだが、其れが打ち首を連想させるらしい。映画などでそのような場面を幾度か眼にしている。確かに衝撃的ではあるものの、ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」がどんなことをうたっているのか、また其れに関する寫眞を見たときほどの強烈な衝撃は感じていない。
其れに武家の家柄でもあるまいし、と椿を活けた花瓶の水を取り替える。
落ちた椿の花が地面いっぱいに拡がっている様は美しく、他のものが入る余地もない。此の春は其れが見られないことを残念に想っている。