とろろご飯
2025, Mar 29
ふれても痒くならず、大胆に素手で山芋を掴み大根おろしで擦っていく。すりこ木とすり鉢も用意したものの必要ないほどなめらかな状態になった山芋をじっとみつめてしまう。なにも麦飯でなくともおいしいのかあなどと言いながら、炊きあがったばかりのご飯にとろろになった山芋を添えて小皿に盛り仏前まで運んでいく。
痒くならないー、と弾んだ声で彼に差し出す。採ったばかりの山芋を食べるなんて想像していなかった。あなたはこれから何がしたい?と訊いても首を傾げているだけの彼。望むこともだいじだろうけれど、しっかりと受け取ることが何よりだと彼を見てて想う。
いつもと違いお茶碗いっぱいによそったご飯。にこりとした後で椿が描かれたお茶碗をしまったままにしてあることを思い出す。痛みごと呑み込んで、おいしいと何度も口にした。