例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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入梅


 遅い梅雨入り。やっと梔子の花が咲く。かすかな匂いはまだ気付かないほどで、知らずに通り過ぎてしまうところだった。
 壱本だけ買ってきたとうもろこしを早速茹でる。其の後電子レンジで焦げ目をつけ、ふたつに切り分ける。だいぶ大きさが違う。小さい方を小皿にとり彼に昼食だと言い差し出す。
 歯を立てるとあまいかほりと味が口の中に拡がる。

 また夏が巡ってくる。壱瞬のかほり。壱瞬の波。壱瞬の花火。壱瞬の光景。壱瞬の表情。尽きることない想い。
 陸月になり冷蔵庫に炭酸水を常備するようになった。淡くはじける泡に顔を近付ければ猫にでも金魚にでもなんでも逢えそうで、真夜中でも明け方でも関係なく起きて冷蔵庫を開けてしまう。

 暗い台所で、耳を清まさなくても聞こえてくるのは雨の音。
 何処へ流れていくのだろうと想い明かりもつけずに立ち尽くす。今、あたしの傍で流れているのは時間だと知っていても。

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