ビニイル傘
2024, Jun 24
雨の中を歩く。梔子は昨日よりふたつみっつ花開いている。
上下黒と上下白の衣服を交互にまとうのが好きだったのに、黒しか着られなくなってしまった。それでも白には眼が行く。外に出れば梔子の花を探してしまうし、普段珈琲を飲むカップは乳白色と決まっている。
此の間から彼の半袖のTシャツを着るようになった。
中でも弐枚本当にさらさらとした生地が気持ちいいものがあり、色も同じ黒でも光沢がありとてもきれいだ。
同じ綿でも絲の織り方が異なるのだろうか。着る都度撫でてしまう。
昨日またわんわん泣いた。
頭に浮かぶひとつの光景。其れにふれると泣く。泣けばかっと熱くなった心が落ち着く。幾度も其れを繰り返している。
繰り返すうち、それでいいと想うようになった。少なくとも、其れに慣れてしまうのは、恐ろしいことだと想えて仕方ない。
いろいろなことに慣れてしまいたくない。神経質でいろいろと慣れないことに困っていたけれど、数えれば慣れてしまったものの方が圧倒的に多いと想う。
「おはよう。」と言い彼の前に立つとき、毎朝新しい自分であったらいいと願わずにいられない。
大きな透明のビニイル傘に彼の後ろ姿をみつけたような気がして、同じようにあたしも歩いた。