俄雪
2025, Mar 05
朝から強い雨の降る寒い壱日になった。
こんな日はあまいものが欲しくなり、ついついキャラメルを頬張ってしまう。屑入れにしたバケツの中にキャラメルを食べた後の透明な袋が溜まっていく。
夕刻になると雨は雪に変わった。
雪が降り始めるとき何故あれほど幻想的な空間となるのだろう。夢を見ているようだと郵便箱の隣で立ち竦んだまま動けなくなってしまった。けれど其れは束の間のことで、雪はすぐに雨に戻ってしまった。
壱瞬の夢。余りにも果敢なく美しい夢だった。
夕餉の支度をと流しの前に立つと、花瓶の水を替えたときにそのままにしておいた無数の菜の花のはなびらが雪のように流しの中に覗いていた。
キャラメルをまたひとつ頬張り、夕餉の支度にとりかかった。