ガウン
2025, Feb 05
カーディガンを出す為に桐箪笥の引き出しを引く。不織布に収めまるめて入れたものからひとつ取り出す。取り出したのは灰色の霜降りの彼のカーディガン。
長めのカーディガンはあたしが着ると膝まで届き、まるでガウンのようでパジャマの上に着るのに丁度よかった。元々袖口が折り返すタイプのもので、袖も手首の先まで行くことはない。
誠実に生きることは難しく、何度も逸脱し其の都度正すの繰り返し。そもそも誠実と正直は必ずしも一致するものでなく、人格がしっかりしていない自分は答を探し悩むことになる。
初めに抱いた気持ちに戻ろうとするとき、いつしか其処に彼を感じるようになった。気付かなかっただけで、ふたりの時間ができたときからそうだったのかもしれない。考えると恥ずかしくなるくらいあたしは眼の前のことに集中するだけで、特に自身に対する意識に無頓着だった。
ついていけない。そう言わなかった彼。
未だに地平線を見てばかりいるあたしを、白いものばかり想像して愉しむあたしを、駄目なあたしを今も彼が包んでいる。