まるで夢のような日々
2024, Dec 11
まるで夢のような日々、まるで夢のような日々、と段ボール箱の口を閉じる都度放たれる言葉を遅れることなく耳は拾う。
小学校へあがるまでの記憶は殆どないのに、其の後は愉しかったことも印象深いと感じたことも嫌だったことも辛かったことも誰かを傷付けたことも疲れるほど憶えている。其の記憶こそ変わらないのに、どうでもよくなってしまったほど、彼とのまるで夢のような日々が今の自分に残っている。
喧嘩したことも嫌いだと想ったことも、思い出す傍から花が零れ落ちる。何の気も遣わないほど信用しあまえていた自分を想う。
昔の彼の寫眞に可愛いなんて想っては、(たぶん)満面の笑みを浮かべている。弐年くらい前に寫した寫眞は部屋に飾っていない。頬が膨らんで痛々しそうなのもあるけれど、自分だけ齢をとっていくのだと想うとたまらなくなる。
素敵なおじいさんになると想ってた。
あたしが先に亡くなるから、花は梔子か椿を添えて。
ひとつだけ聞いてくれなかった我が儘を口にして今日も眠りにつく。