例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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基準


 今日はいとこが一緒に母の面会に行ってくれた。
 仏様にと御仏前を渡し、ちょっとだけだけれどと添える。気持ちが嬉しいよと言葉が返り、心の内で母も自分も特に伯父には世話になったものと想っていると、もううちもそんなに人は来ないからと言う。言葉通りなら淋しい話だ。
 何処まで行ってもどれだけ時が経っても感謝は消えない。
 明日、父と夫が眠る墓に連れて行ってくれるといとこが言うので、頭を下げる。にいちゃんはこう云うことだいじにするなあ、と感心しつつ、だから彼を信用しているのか自分は、と想う。
 他人とつきあう基準は損得でなく、感謝できているか信用できているか。其れはきっと此の先も変わらない。

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命日


 朝起きて、腰と裾を直した彼の麻のパンツを穿く。上も黒の麻の服。
 いつものように珈琲を淹れひと息つき、桃を買いに行く。なるたけ熟した赤い桃を。

 線香の匂いが立ち込める部屋。
 蝋燭は蓮の形をした大きな蝋燭を用意した。花瓶に活けたのは家に咲いていた花。

 静かな壱日。或の日からあたしは漆佰丗日も生きた。
 夕刻は俄雨。静けさがより深くなり、首から下げた彼を握りしめ椅子に沈む。

 捌月。今日も暑かった。

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 道は何処までも続いていると想っていた。
 辿り着いたのは崖、眼の前に拡がっていたのは海。
 細く長い筋を道と呼んできたけれど、広大な海も草原も道だった。
 至る処に道はあり、好きに歩いていく。
 歩いた場所はすぐに波や草に隠れ、歩いていない場所との区別がつかない。
 誰にも見えない、わからない、其の跡が自分だけが知る自分の道。

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工具箱


 元はいったい何が入っていたのか。汚れのある空き箱も取っておく母に呆れていたが、白木の箱をみつけたときは嬉しかった。
 外に置いた物置き代に置き使ってもいいよう、水性ニスで胡桃色に染める。工具箱らしくなった箱に、ペンチを詰めようと考えている。玄翁はさすがに入らないだろうと想っていたけれど、トンカチでも長さが足りなかった。
 トンカチはやはり鋳物のバケツに入れておくのがいいのだろうか。

 土曜日はまた月に壱度の燃えないゴミの日。玄関脇が少しづつ片付いていっている。
 暑さが止んだら縁台の塗り替えをしたい。
 自分も夫も亀たちも猫も父も母も悦ぶように。
 壱度はダメになったかと想われた鉢植えの姫林檎が、いつつむっつとは言え実をつけた。赤くなるだろうか。大きくなるだろうか。取り敢えずそれまでは生きようなんて、日々そんなところ。

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空の容器


 筒状の保存容器がいつつ。短いものがみっつ。長いものがふたつ。短いひとつには昆布が入っている。あとのよっつは空。
 涼しくなったらマカロニとスパゲティを買ってきて入れようと考えているけれど、中身が空になるなんて想ってもみなかった。探してやっと長さの合うものをみつけたのに、だんだんとこう云うものも要らなくなっていくのだろうか。
 普通だったら当たり前に変化として受け容れただろうに、小さなことのひとつひとつに立ち止まる。

 うにのソースは自分は食べられないけれど、保存も利くし買ってこようか。
 納豆、落花生、ミントチョコレイト、ブルーチーズ。食べられないこともない栗のケーキ。

 外は五月蠅いのに耳の内は余りにも静かで泣けてきた。

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