例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

鳩は、


 毎朝屋根の上から聞こえてくる物音が鳩の仕業だと知ったとき、鳩は大嫌いとつぶやいていた。
 元々此処に鳩はいなかった。頻繁に泊まりに来ていたときも鳩を見掛けることはなかった。壱年か弐年の間に鳩はやってくるようになったのだと想う。誰か餌付けしたのかもしれない。
 鳩は嫌い。其れは表向きの言葉で、可愛いだとか利口だとか可哀想だとか安易な理由で他に親切にする者に毒を吐いたと云うのが本当。
 引っ越す前の家の近くにあった或の小さな橋は、いつも糞まみれで鳩が通行の邪魔になっていた。餌を撒いていた者は誰一人として、餌だけやって糞や抜けた羽根の掃除には来ない。自分の家の庭に呼んでしたらいいことなのに、と想い渡っていた橋は今はどうなっているだろうか。シラサギは今年もやって来たのだろうか。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

ひとりで


 瞼が痙攣するのは時々あることだけれど、今日は目頭も熱いなと想っていると眼を開けられなくなった。そうして横になるといつのまにか眠っていた。
 陸時では陽射しが強く、伍時起きするようにしたところ此の有様。逆算すると漆時間半。たまに肆時半に起きることもあるが、既に表も家の中も明るくなっているのと凌げる暑さで気持ちいい。亀たちは既に目覚めていて、餌を所望しそれはそれは活発なことになっている。このまま起床は肆時半にしようかとさえ想ったりしていたのに、無理があった。明らかに睡眠不足。
 せめて捌時半に布団に入るか、昼寝の時間を決めるようにしないと。

 生活の中で苦手なこと。其の壱は食事。其の弐は睡眠。
 彼の帰宅時間が遅い日や彼が友人の家に泊まるとわかった日の夕食はプリンだったりポテトチップスだったり・・・。
 ひとりでも泣いたり笑ったりできるようになったのに、ひとりでは規則正しい生活を送れずにいる。
 ごはんをしっかり作った日は卓にふたり分の皿が並び、あたしは彼の箸を洗う。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

暖簾


 トイレの傍にベッドと云う母の要望は、母の部屋が兼客間となった。介護を考えたら其れが最良だった。

 母の部屋から台所と自室へ続く扉の前に突っ張り棒をつけ暖簾を垂らす。今日のような丗度に届かない日は、部屋の戸が残らず開けっ放しになる。自分もだが、奥まで見えては客人も落ち着かないだろうと考え暖簾を垂らした。
 ガーゼのバスタオルを弐枚使い暖簾代わりにしたものだが、赤い金魚の柄が古い家と古い家に置かれた座卓や茣蓙の敷物と合い、くぐる都度猫とふたりで過ごした遠い夏が蘇り胸の辺りがぬくくなる。

 ぱたぱたと裸足で歩き暖簾をくぐり、珈琲に入れるのは牛乳がいい?アイスクリイムがいい?、と彼に尋ねる。それから、にゃあが遊びに来ないかな、なんてそんな話をして今年も夏を過ごしている。
 時の並びなどもうどうでもよく、憶えていることをしっかり憶えていればいいかと想うようになった。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

Unchained Melody


 録画した映画「エルヴィス」をやっと観ることができた。
 エルヴィス格好いいなあ、と想い観たけれど、或のマネージャーでなかったら、世界ツアーを敢行していたら、と想ってしまう。たらればは嫌いなのに、極たまに他人に繋がれている鎖や理不尽と云ったことに腹を立てていることがある。
 彼が空爆に遭わなかったら、薬に侵されなかったら、身代わりにされなかったら、逆恨みされなかったら、・・・。
 天使が壱曲うたってくれると言うなら、リクエスト曲は「Unchained Melody」。自分以外の誰かの為に。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

エール



 部屋に通され、壱週間振りに逢った母はベッドの上でよく眠っていた。が、鼻チューブをつけている。鼻チューブに良い印象はなく、それだけであたしは困惑してしまったのか混乱してしまったのか、母に声を掛けつつ手や肩にさわりながらも頭がぼうっとしたような状態になっているのを感じていた。
 面会が終え看護師さんに尋ね、今朝丗捌度もの熱があった為鼻チューブがつけられたことがわかった。
 壱週間でそこまで悪くなったのでないとわかると落ち着いたが、帰宅するとぐったりしている自分がいた。

 人は戦っている。生まれたときら死ぬまで壱日と抜くことなく。
 あなたに手を振り続けよう。
 どうか苦しさに人生の解釈を捻じ曲げぬよう。外れた道へ向かわぬよう。迷ってもあなたがあなたのところへ戻れますように。

拍手

      郵便箱