暖簾
2025, Aug 10
トイレの傍にベッドと云う母の要望は、母の部屋が兼客間となった。介護を考えたら其れが最良だった。
母の部屋から台所と自室へ続く扉の前に突っ張り棒をつけ暖簾を垂らす。今日のような丗度に届かない日は、部屋の戸が残らず開けっ放しになる。自分もだが、奥まで見えては客人も落ち着かないだろうと考え暖簾を垂らした。
ガーゼのバスタオルを弐枚使い暖簾代わりにしたものだが、赤い金魚の柄が古い家と古い家に置かれた座卓や茣蓙の敷物と合い、くぐる都度猫とふたりで過ごした遠い夏が蘇り胸の辺りがぬくくなる。
ぱたぱたと裸足で歩き暖簾をくぐり、珈琲に入れるのは牛乳がいい?アイスクリイムがいい?、と彼に尋ねる。それから、にゃあが遊びに来ないかな、なんてそんな話をして今年も夏を過ごしている。
時の並びなどもうどうでもよく、憶えていることをしっかり憶えていればいいかと想うようになった。