例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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雨の降る寒い日に


 朝から降り続く雨。夏が去ってから掃除以外で初めてエアコンを作動させる。
 そうして躯を温め、被りのワンピースの下にタートルセーターを着て母に逢いに行ったものの、バスの時間を気にし靴はいつもの布靴な為足は濡れてしまった。
 来たよお、と声を掛けると、(自分は)大丈夫、と返す母。寫眞を見せながら菊が咲いたことを伝えると、素敵といい表情を浮かべる。靴の中は気になるけれどよかったと想っていると、(時間があるうちに)ご飯を食べちゃいなさいと心配され、他人の心配はしなくていいの、人間自分のことを頑張ればいいの、と咄嗟に言葉が出た自身に自身で驚く。

 意識は搾取する人間をかなり深くまで刻んだのだろう。光が美しければ影も美しく、けれど光が人を何処までも照らすものであれば闇は何処までも虚偽と強欲を人にまとわせる。善も悪も少なからずひとりの人間の内に存在するものだろうに、均衡を忘れてしまった人たちがいる。
 搾取ばかり考えている人間も損得しかない人間も虚偽を働く人間も・・・、他人と比較して自身をみているからではないか、結局自身の軸を持たないからではないか、などと帰宅するバスの中でうつらうつらしつつ想う。

 家に着き靴の裏を見ると底がぼろぼろになっていた。劣化するときは破滅でもするかのようで苦笑する。

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竹籠


 どれくらい前のものなのか。傷んだ竹籠。汚れも酷い。けれど軽く、持ち手が付いていて大きさもあり重宝しそうだと想った。
 中にはたいしたものが入ってなく取り出し籠を洗う。乾かして欅色の水性ニスを塗り、縁を陸箇所麻紐でゆわくと、台所に置いてもおかしくない籠になった。

 ひとつづつ直していく。少しづつ整っていく。
 終わりの見えない作業。春から壱日も欠かさず、ひとりでこんなことをしている。
 此れが自分の日々だと実感する日が来るのだろうか。いつか此の事が自分を形作ったりするだろうか。これまでがそうだからと言い、これからもそうなるとは限らない。
 絶えず自分と相手(自身や静物、夫)と会話する。

 電気釜や電気ポット、食料品を入れた籠の隣に竹籠を置くと居心地が悪くないと云うような顔をしているので、其処にいてもらうことにした。

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花籠


 菊が花開いた。白やうすむらさき色した野菊と同じように、赤紫色した小菊も可憐で、見ていると落ち着く。
 持ち手の付いた小さな花籠が欲しくなる。
 和室に置いた桐箪笥と引き出しが数段ある小物入れに畳の縁でこしらえた母の手提げ袋。其処に母の裁縫箱と花籠を置き、いずれ寝室にしようかと考える。

 此の町に友人はいない。縁側でお茶をお出しし話をする母の友人であり近所の人はいても、家の中まで招き入れるつきあいの人は自分にはいない。
 全て自分に与えるものであり、夫に語りかけるものでもあればいい。

 家の周りががたがたと音を立て始めた。強い風に肩をすくめる。
 季節は晩秋に、と言うと紅葉を見に散歩に行こうと彼が応える。芒をとってきて飾っても素敵だろうな。・・・すっかり花籠が欲しくなってしまっているような。。買うの?と彼のひと言。いつも助長することしか言わない彼に今日も笑っておしまいにした。

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大きなブロッコリー


 夜漆時頃いるよね?と訊かれいとこを待っていると、届いたのはブロッコリーだった。
 店で売られている肆倍から伍倍の大きさもあるブロッコリーに、大きいでしょうと言われても唖然としてしまい頷くのがやっとだった。彼が育てたのかどうかさえ尋ねるのを忘れていた。

 ブロッコリーに包丁を入れ房を小さくしてから逆さにし、ボウルに溜めた水に浸け洗ったが、其れを参回も繰り返すことになった。茹でるにしても鍋に入りきらず弐回に分け茹でた。
 保存容器をみっつ使っても収まらない。ベーコンかウインナーソーセージがあるとよかったのだけれど、保存容器に入りきらなかったブロッコリーはコーンスープに押し込んでいただいた。

 緑がきれい。そう言って冷蔵庫の中の人参ラぺや大根煮を入れた保存容器の隣にブロッコリーを入れた保存容器を並べる。
 参日後にブロッコリーが残っているかどうか。弐日後だってあやしい。

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姫林檎の実


 枯れそうになっていた姫林檎の樹が此の秋小さな小さな実をみっつよっつつけたと想っていると、赤く染まり始めた。ひとつぶでもと真っ赤になった実を寫眞に撮り母に見せると本当に嬉しそうに笑う。
 荒らされた家が少しづつ整っていく。其れにつられ母の挫けた心も明るくなっていく。秋もにぎやかな庭になればいい。

 今月で以前の住所からの手紙の転送が終了する。夫と関わっていた人たちであれば動けないこともないのに。以前の自分であれば無理してでも動いていたけれど。住所変更のお知らせができないままでいる。
 悲しいことは忘れない。消えない。性格上嫌だったことは何度も思い出すし、そして意思で消さない。

 決して交じりあうことない悦びと悲しみ。
 できることだけしていこう。
 姫林檎の実が大きくなることを単純に想っている。

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