例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

アカシアのリース


 まるめた枝が乾いてしっかりしたので隙間に短い枝を挿していくと、無骨ながらアカシアのリースができあがった。玄関のベンチを置いた辺りの壁に掛けると、以前住んでいた家の玄関の雰囲気と重なった。
 以前は玄関に乾燥花だの人形だの硝子製の小さな置き物だのとたくさん並べていたけれど、彼も何も言わず、それどころか意外な客人に褒められたりしたものだから、此処に越すまで何年もそのまま過ごすことになった。
 此処で新たに此のリースから玄関を整えていこうと想う。
 リースにはもう少し花を足し華やかにしてみようか。けれどリボンを付けたり他の花を足すことはないだろう。どんなに美しくとも自身だったり彼だったりが感じなければ要らない。
 日々自身を削ったり足したり。部屋も暮らしも同じ。そこにあるのはそこで日々を過ごす者の呼吸。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

ふくらんだ珈琲豆


 驚くほどふくらんだ珈琲に想わず彼に声を掛け、一緒に匂いを嗅ぐ。
 昨日まで飲んでいた珈琲はあまく飲みやすかったけれど、どんなに丁寧に蒸らしてもたいしてふくらみはしなかった。初めての購入に立派なトートバッグと小冊子までついてはきたが、そう言えば焙煎日は記されていなかった。
 今回頼んだ珈琲豆は安価でブレンド豆のせいかばらつきもあり苦みが強いのに、焙煎日が記され、新鮮なだけ飲みやすい。

 買い物をしてこようと外に出ると、鉢植えに青いハナニラがひとつ咲いていた。パンと牛乳の他、ホタルイカも買ってしまう。
 これも好きでしょう?と小皿を珈琲カップの隣りに置く。其の傍にはいっぱいのアカシアが。
 好きなことも愉しいことも、彼に繋がる。
 アカシアのリースも乾いてきて形が定まりつつある。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

ハナニラ


 急に角に白い花が咲いた。星の形をしていたので、すぐにハナニラとわかった。鉢植えいっぱいにひょろひょろと長い葉だけの植物が育ち、抜いたらいいのか迷っていたが、これもハナニラらしい。
 次から次へとやってきては消えていく植物たち。根付いてもらえるように余り手間のかからない植物を買ってこようと考えていたけれど、ハナニラの様子を見ることにしようか。
 それにしても毎日のように水やりをしたり飛んできた落ち葉を拾ったりしているのに、花が咲くのは急で驚いてしまう。ハナニラに関しては、いったいいつのまに莟をつけていたのだろう。全く気付かなかった。
 眼に見えるものと眼に見えないもの。ハナニラにもあり、誰かにもあり、自分にもあるのを否定しない。其れがハナニラであっても誰かであっても自分であっても、見えないものが果てのない悲しみであっても他に向ける凶器ではないことを願う。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

アカシアの咲くころ



 バケツに入っている全て欲しくなってしまうほど、ひとつひとつが大きな束になっているアカシアだった。ひとつでもやっと抱えられるほどのアカシアを壊れないように抱きしめ、胸を弾ませ歩く。
 持ち帰ったアカシアは玄関脇でばらすことになった。

 剪定鋏で適当な長さに枝を切ったり、花瓶を玄関脇まで運びアカシアを挿したり、残ったアカシアをどうしようか考えたりしては、其の都度顔がほころぶのがわかり、指で頬をつつく。
 残ったアカシアはリースになった。土台やワイヤーなど持っていなく、枝を丸め麻紐で止めた。乾いて形がしっかりしたら、また考えよう。
 幾度も考える。答のないものまで考える。自身なりの考えが持てるまで。

 アカシアの咲くころ、いろいろ想う。想いを巡らせる。そうして最後は井上陽水の「傘がない」を口遊む。
 けれども問題は今日の・・・。生きることはそんなにも苦しく、漠然とアカシアで埋まる空を想う。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

スフレケーキのようなもの


 朝の雨が雪へと変わっていく。部屋の空気は重くなり、冷たい匂いが鼻を突く。寒さに耐えられず服を壱枚足した。
 昼食にクリイムシチューをこしらえ、ついでにホットケーキの素をボウルに入れ卵と牛乳、紅茶葉を加え混ぜ合わせ、小さなフライパンに流しに入れ高さを作り蒸し焼きにする。そこにオレンヂの輪切りも加える。
 想像したのはスフレケーキだった。けれど冷めないうちにひとりで食べきれるわけもなく、おやつの時間に再び口にしたときには生スコーンと記されていたものと同じようなものになっていた。
 これはこれで・・・、とすっかり晴れ渡った空を見上げる。空気は温まらず足した服を脱ぐことはできず、かじかんだ両手で珈琲カップを包む。今度こしらえるときはもう少し紅茶葉を入れようなどと想いつつ。

拍手

      郵便箱