例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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台所に立つ


 室内は拾伍度。暖房し台所に立つ。
 きゃべつにベーコン、昨日また届いた大きなブロッコリーに牛乳がある。ホワイトシチューをこしらえ、ライ麦を使った中がもっちりとしたパンを皿に乗せ昼食にする。
 寒い日は温かいものを口に入れたくなる。それとあまいもの。
 食後の珈琲には牛乳と氷砂糖を入れた。

 来月になったら申請した米袋が届く予定。此の間から黒米ともち麦が一緒になった冷凍食品の米を食べ凌いでいる。
 誰のことも助けない。誰にも助けを求めない。自分が今どう云う心情でいるのかなんとなくわかるけれど、放っておく。ただ親切な人はいるもので、其の行為には素直にあまえている。

 心は絶えずゆれている。強くなったり弱くなったり、やさしくなったり冷ややかになったり。壱日の内に幾度も泣いて幾度も笑う。
 そうしてぼんやりと彼の着ていたはんてんを眺めたあとで、またしゃきっと台所に立つ。

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遠い


 ぼろぼろになった底は接着剤で此れ以上傷むのを防ぎ、布靴は晴天専用の靴にした。春になったらきっと同じ銘柄の同じような靴を買うに違いない。
 今回は銘柄こそ同じだが、ビニイル製のがっしりしたスニーカーにした。雨でも雪の日でも気にならず履けるだろう。黒い紐を伸縮性のある茶色の紐に替えたらブーツのような見た目になった。持っているブーツは踵が危うくなってきているので丁度よかったのではないだろうか。

 柿を使ってしまい、買ってきた蜜柑。少し酸っぱくてまだ味が薄い。
 近付いているようでいて遠い冬。油断していたら陽射しに頬が痛んでしまった。

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柿染め


 熟してきた渋柿は果肉がやわらかく、口に合わないとわかった。近所の方から戴いた柿と一緒にし細かく刻み網に入れ鍋で煮ると、湯がオレンヂ色になった。こんなに鮮やかに色が出るなら或る程度染まるだろう、とまだ棄てるには惜しい夏の白いブラウスを壱枚煮汁に漬け込む。
 ブラウスはオレンヂでなく黄の色が付いた。黄色の洋服は着ないのだが、割烹着にするならカナリア色の黄も悪くない。玉葱の皮で染めカナリア色になったブラウスも割烹着にして着ていたことがある。

 ひと通り作業を済ませ暫く外に干し様子を見に行くと、ブラウスはまだらに染まっていた。
 壱年くらい寝かせてからとか漉してジャム状にしてとか柿染めの仕方に書いてあったが、網をあげ煮汁を落ち着かせてから上の方の煮汁だけ使えばよかったのだろう。玉葱の皮と異なり果肉が網から抜け、まだらに染まってしまったのだ。考えればわかりそうなものだが、自分は壱度失敗してからでないといいものをみつけられない。

 失敗しても愉しかったし、着ていて気に入らないと想ったら漂白してしまおう。
 続きの方が長い。

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弐階の部屋から冬の星へ


 日当たりのいい弐階の部屋。カーテンが作る影に、今日も光が包帯のようになっていると想い眺めている。
 しだいに眠くなり光の中で横になると、かすかに聞こえる旋律。耳の内に現れた小さくてやっと聞きとれるほどの歌。
 周りは見えているのに何もかも消えた世界。なのに胸からどんどんあふれ出てくるものがあり泪がとまらなくなっている世界。狂おしいほどのいとおしさ。
 声。少し掠れたやさしい声。其れに委ねるほど自立するあたし。わずかな息。其れは持っている。

 毎日毎日星が見えないと想っていたら、丁度此の辺りの夜空はすっきり晴れた天気になっていなかったらしい。
 冬になったら星に逢えるかな。冬になったら星に逢いたい。

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悦び


 だんだんと花開いていく菊。赤ばかりでなく白い花もみつかる。父の前に置いた花瓶を家に咲いた菊でいっぱいにする。其れは小さな悦び。
 茎の下の方が駄目になってきたうす紫の小菊は庭の隅に挿すことにした。根付かなかったらそれまで。根付いたらケーキでも買ってきて祝うのだと想う。
 嬉しいことは毎日いつつみつかるから、あたしは毎日伍度は口角をあげているのだろう。其れは毎日伍度泣くと云うことにもなっているのだろうけれど。

 参箇所に置いた彼の寫眞。
 泣かないと言う必要もなく、泣かないと口にしても辛くはなく、泣いても大丈夫なのは相手が寫眞だからでなく。
 彼の物はもう何も増えることないと想っていた。此処に来てみつけた大きなすべり台のある公園に、土手に咲いた彼岸花の傍に、亀やうさぎのブロンズ像の向こうに、彼の姿を見る。一緒に洗濯物や布団を干したり亀たちの世話をしたり、新しくしたタオルやスリッパを一緒に使ったりもする。
 其れはあたしの呼吸。小さな悦び。生きている日々。

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