例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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ジャニスの眼鏡


 これからは適当なところで済ませるしかなくなると想い、眼鏡を作りに行く。
 現在の眼鏡の枠幅は107mmと小さく、細い枠でもレンズの厚みがそう気にならないのも気に入っている。同じように枠幅が小さく、形はラウンド、色はまた金と銀と茶を混ぜ合わせたようなものをと考えていた。今回色は薄紅色になったが、手に取ったとき軽かったので決めてしまう。
 度が強く壱週間くらい待たされることが多いのに、参日後にできあがると言われにやける。

 ラウンド型の眼鏡の切っ掛けはジャニス・ジョプリンだった。「ジョプリン・イン・コンサート」のジャケット寫眞の彼女が可愛らしく、以来ラウンドしか選ばなくなった。
 ジャニスのようには笑えない。けれどすっかり自分の特質になったまるい眼鏡が好きだと言える。
 変わらないものを沢山残しつつあたしは変わってきたのだろうし、変わり続けていくのだと想う。

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さよなら、さよなら


 世界中の何処かにきっと同じような人はいるだろう。けれど、毎日わんわん泣いた気持ちも死にたくなった気持ちも、周りの人は知らない。
 人はひとりで立っている。

 今日も処分するものが出た。大量の物を処分し続けている。其れはそれだけ出逢ってきたのだと想い、さよならを口にする。さよなら、さよなら。ありがとう。
 少しづつ何かに支えられ人は歩んでいる。

 感情は時折厄介なものとなる。他人の感情も自分の感情も半分信用しない。
 傷付いて終えたことには、さよならすらない。

 これからも一緒にいてねとキスをして、荷物の中にカエルの人形を詰めた。深淵があたしにもあるのならカエルの人形は其処に行ったのかもしれない。
 もう出掛けることない湖、遠くなった森。彼と過ごした日々の記憶も深淵に行っただろうか。

 人は何を自分のものにできるのだろう。決してわかることのできない他。
 ただ手を繋ぐのが好きだった。カエルの人形の手にふれる。これからも時々手を繋いでね・・・。
 ありがとうはあるのに、あたしたちにさよならがないのは何故だろう。

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立冬


 最後のピーチティーを淹れ、棚から下ろした電気ストーブの前で冬を迎えた。
 どこまであたしは来たのだろう。

 治療で味覚がわからなくなった彼がココアの甘さは少しわかると言ったので、午后参時ココアを作るのが壱時日課になった。
 去年はココアを買わずに壱度も作ることはなかった。此の冬はどうなるだろう。

 彼が使っていたものをまだ棄てられずに、歯ブラシさえそのままに、引っ越しの荷造りをしている。
 歯ブラシまで持っていく気はないものの、いろいろと思い出しては笑ったりして、其れが棄てるものだとなかなか気付かない。

 毎日少しづつ進んでいると想ったり、立ち止まっていると感じたり、どちらでもないとひとりごちていたり。

 夜、起きていられなくなった。捌時を過ぎたあたりから目を開けているのが辛くなった。
 ひとつふたつ時を戻り、狼になった夢を見るのもいいかもしれない。

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緞帳が下りても


 自分で手続きの書類を取って来たり、電話をしたりで、壱日が終わる。わからずに躓いてもおかしいと想うことがなく、ひとつずつゆっくり進めていくとだんだんわかってくる。
 今日は引っ越しの荷物はひとつも作れなかったけれど、嫌な気持ちにはなっていない。

 拾陸度まで下がった最高気温にふるえてしまっていた。下着だけでは追い付かないとわかりセーターを引っ張り出して着る。それに肩掛け用の毛布に羽毛布団も出した。
 ひと月早く引っ越しを進めてもよかったかなと一瞬想ったが、最後に美術館とライブに出掛けたかった。

 緞帳が下りても笑っていたい。此処で過ごしたことに嫌な傷を付けたくない。付いた傷にはいい傷だと笑って撫でたい。
 半券を残したままの去年の夏のチケット。彼と一緒に出掛けることを愉しみにしている。

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結論


 今回引っ越しに当たり仲介業者のライフラインサポートサービスを利用してみる。
 ×〇を引き続き利用したいとの此方の要求に対し、繋いでくれた電話に出た人の対応がどうもおかしい。弐週間前に解約の電話をしてくれだの、新しいIDが届くだの、しまいには×〇に△をつけてくる。×〇なことを確かめたうえ△の確認をとると、「大元です」と説明された。
 料金やサービス内容に特に不審点は感じなかったが、どうしても△が気になり一旦電話を置き冷静になる。そして参分後にキャンセルの電話を入れた。×〇の利用ですよねと確認され、そうだが△の利用はないと伝えると直ちに受理された。

 数分後△は自分が利用しているところの子会社になっていたと知る。サービスや料金は殆ど変わらないようだが、利用する物の性能が劣るとわかった。親会社の方は利用するのにできない地域があるようだが、引っ越し先は利用可地域内だ。更に加えれば、他に利用しているものまで変更しなければならないことになる。
 ×〇は◎の利用に関し自分の好きなところを選べるようで、こう云うことが起こったのだと想うが、あたしは最初に何度も今のままこのまま同じ状態でと口にしている。

 結論。×〇△は×〇と同じではない。
 あたしは詐欺に引っ掛かりました。その際△は「大元です」と説明されました」、と言いふらすことにしようっと。そのくらい愉しんでもいいかなと想う。

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