朱夏
2024, Aug 02
此の夏ミンミン蝉の声を初めて聞いた。桂の樹に止まり鳴いていた。傍には紅色の濃い百日紅が咲いていた。
鬼百合は終え鉄砲百合も終わりそうな捌月の始まりに、赤い鶏頭の花を買って帰る。盆に用意するのは赤い蝋燭と住職に教えられ、赤い蓮の花を模した蝋燭も買った。
朱いカンナの咲く道をもう壱度歩きたいだの金魚をもう壱度飼いたいだのと、遠い日を想う。伯父の家の軍鶏はみな売ってしまったと聞いた日、朝早くから起こされる苦痛も忘れあたしはがっかりした。
毒がなさそうなありそうなサルビアの蜜をちょっと舐めて舌を出す。空は雲がいっぱいに拡がり焼けた肩を気にして木陰に飛び込む。たったそれだけのことが嬉しい夏。氷を入れたグラスは決まって高い音を響かせていた。
真夏に生まれた人は真冬に逝き、真冬に生まれた人は夏に逝った。朱く腫れた傷さえいとしいと想う捌月、あたしはまた髪を切った。