浅い春
2025, Feb 17
地元の野菜などが売られている店を覘くと、バケツに梅の枝が入っていた。以前はホームセンターの壱角にある園芸店で切り花を安価で買っていたが、それでも梅や桃など枝についた花は千圓ほどした。
弐佰廿圓のシールがついた枝は、短いが白い花がちらほらついていた。菜の花が散ってしまった花瓶に残った水仙とねこやなぎと合わせて活け、父の前に置いた後、零れた小さな枝を小さな花瓶に挿していく。
毎年のように見に行っていた梅園を脳裏に浮かべ、彼の前にも梅の花を置く。
白梅、紅梅、黄梅に枝垂れ梅に椿。梅と梅の間を潜りまだ浅い春をひとつふたつとみつけては、歩き廻ったことを忘れない。柳の樹も菜の花もほんとうによく憶えていて、すんと今日も鼻を鳴らす。浅い春のやわらかな陽射しと彼のやさしさに埋もれていたあたしを忘れない。