小さな変化
2024, Jun 20
朝起きて洗顔後、なんとなく手入れしてみようと云う気持ちになり、爪化粧をほどこしてみる。足は薄紅、手にはベースコートの透明色で色を付ける。
郵便受けから新聞を抜き、洗濯機を廻し、珈琲を用意し湯を沸かしていたとき、流しの横に置いたステンレス製の伸縮ラックの錆が気になり掃除を始めてしまった。
気になったら始めてしまう。以前からそう云うところがあり計画性に欠けると想っていたけれど、其の性質のようなものがだんだん強くなってきた気がしないでもない。
ラックの錆は満足のいくところまで落ちたものの、爪に弐箇所薄っすらと線が入ってしまった。剥がれ落ちてはいないので気にせず珈琲を淹れ、卓につこうとしはっとなった。
改めて見ると白い脚。焼けた腕。手の爪と足の爪が全く同じ色に見える。
成人したあなたが想像できない、と数人の友人から別々に言われた拾代の終わり。齢廿辺りから細胞の壊死が始まるのだと何かで読んだのは丁度其の頃。意識に入り込んだ壱日生きる毎に死へ向かっていると云う感覚。其れを奥の方へ閉じ込めて過ごしてきたけれど、今となっては無理は感心しない。
ゆっくり息を吸う。自分の小さな変化を受け止める。記憶は引き継がれるものの、昨日の自分と今日の自分は同じではないのかもしれない。