好きになってよかった
2024, Jun 25
文庫本に雑誌に雑記帳にCDを少しだけ残した書架。稼働棚をひとつ外し高さのある物を置けるようにする。折りたたみ式の机はたたんで布を掛け、フックをつけ物を下げられるように。
母が骨折してから父が亡くなるまでの陸年間いろいろあった。辛いとも想わずに過ごしたけれど、それまでの日々と此の借家に越してからの数年間を想うと、辛かったと云う言葉しか出てこない。
逆に考えれば最悪な日々は陸年でしかなかった。其の後参、肆年心が病んでいたように想うけれど、苦痛をくれた人たちのことは忘れた。自身を守る為に何をしてもいいと云う考えは自分に無い。心の内で存在を消してしまう。
与えられた日々は限られている。好きなことに使いたい。
好きになった部屋。好きになった暮らし。倖せになれた自分。あと半年も此処にいられないと知り、過去を撫でる。
好きになってよかった。どうしていけばいいか、少しはわかったつもり。
冷蔵庫に留めたままの新聞の切り抜き。部屋の何処でも聴こえるマイルス・デイヴィスの曲。入れ替えたハウリン・ウルフの書物。止め方がわからず時々鳴る彼の腕時計。
死にたくなったりもするけれど、あたしは好きで生きている。