例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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レモネードの朝


 起き抜けに死んでしまおうかと想った日も、洗面台の前に立つと崩れた生死が元に戻る。自分の内側で枯れかけた壱本の樹木が大地から水を吸い上げ、瞬く間に樹海をこしらえる。寝室から洗面所までの拾数歩、其の間知人皆に暑中見舞いを出そうと考えていたのに、気持ちは失せ浴室の窓を開ける。
 それからおはようと彼に声を掛け、寝室に戻り寝間着にしている綿のTシャツから麻のTシャツに着替える。着替えると樹海と繋がった足は部屋を駈け家中の窓を開けると、亀たちに餌をあげ水槽を外へ運んだ。

 和室に置いた町の防災ラジオから、今日も気温が高く・・・エアコンを・・・、と声が流れてくるが、窓を開けている昼間は軒下に出たり、打ち水や扇風機で過ごしている。
 腰は玖割程治ってはいるが、庇うせいか軽い筋肉痛になってしまった。
 口まで水を入れた如雨露が重い。参度繰り返し全ての花に水をやり終えたあたしを亀たちがじっと見ているが、体力は残ってなく遊ぶなんてできやしない。

 昨日弐回も泣いたことは亀たちにも秘密。
 炭酸水と檸檬ジュースでこしらえるレモネードは少し物足りなく、彼も好きだった国産檸檬の砂糖漬けを思い出し樹海の入り口を閉じた。

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