例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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じゃがいもの感触


 雨は烈しく、母の家に着く頃には傘も靴もすっかり濡れてしまった。
 靴下を脱いで家にあがる。

 家の中が蒸している。雨天のせいだけでなく、コンロにかかった鍋から湯気が出ている。父に挨拶し母の処へ戻ると、更に湯気があがっていた。鍋の蓋が取られ、できがったものが皿に盛られていた。
 いとこがあたしへも分けると話していたじゃがいもと同じじゃがいもだろう。父も夫もじゃがいもは好きだったな、と想い頬張る。頬張る先からほろっと崩れていく。なつかしいような安心するような感触。陽だまりを思い出す味と匂い。口の中で記憶が溶けていく。

 改築が済んで新しく台所ができたならポテトチップスを作ってみよう。
 猫さえポテトチップスが好きだった。猫にはいけないのだろうけれど、そっとそっと出してくる可愛らしい手が愛おしい。

 ひとつでは足りずふたつも食べてしまっていた。

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