例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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渋柿


 それは立派な千日紅の花束で、最後のひとつとは言え手に取らずにいられなかった。柿とて同じ。それは立派な柿色をしている柿で、渋柿と断り書きがあっても手に取らずにいられなかった。
 通常店に並んだりしない此の柿は、伯父の家から貰っていた柿と似ているような違うような。ゴマの入った或の硬い柿が唯一自分が口にできる柿だった。
 きみを食べることはできるだろうか。もし食べられなかったなら渋柿染めの材料にでもなってもらおうか。無駄にはしない。仮に失敗してもいい経験だとあたしは笑っているだろう。
 花束ときゃべつを買う筈がきゃべつが柿になってしまい、今週壱週間をどう乗り切ろうか思案中。

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バスを待って


 雨の中バスを待った。拾分遅れで前のバスが着いたので拾分は待つだろうと想っていたが、廿分過ぎてもやって来ない。事故だろうかと想いバス会社に電話すると、本当に事故があり遅れると言う。其の伍分後にバスはやって来たが、其の前に病院の椅子に丗分座ってから停留所に来ている。
 いつもなら寒さにふるえていただろうが、今日は腰に懐炉を貼ってきた。それに降車するのは家の近くの停留所。橋向こうを走っているバスと橋のこちら側まで走って来るバスと参倍もの料金の差があるけれど、橋向こうを走るバスは今日は拾伍時が最終だし腰に不安がある日は壱度たりとて時間通りに来たことがないバスでも助かる。

 今日は運がよかったのか悪かったのか、考えてしまった。そして其れをすぐに手放した。
 遅かったねとでも言うように、帰宅すると騒ぎ出した亀。可愛いで頭がいっぱいになる。
 いつも通りでした、と父に声を掛け風呂の湯を溜めた。

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冷え


 此の参日ばかり腰の調子が悪く、叩こうが揉もうが着こもうが一向によくならない。さりとて後ろに反ることができるのでぎっくり腰でもなさそうな。
 母の湿布薬を拝借し貼ってみるものの変わりなく、冬でもないのにと想ったが隣に置いてあった懐炉を貼ってみる。すると痛みもなく躯を動かせるようになった。
 彼の手や躯に、幾度熱くて気持ち悪くなったと言ったことだろう。そのくせ冬になると勝手に布団に入り込み中央で堂々と眠る亀に、凍えさせて殺そうと想ってない?と幾度問うたことだろう。
 年中躯の冷たい自分。ときどき其のことを思い出すけれど、普段忘れてしまっている。
 絶え間なく聞こえる雨の音。ブランケットを腰に捲き家の中を歩き廻る。たまにはスリッパを履いてみようかな、家の中でも靴下を穿いた方がいいのかな。懐炉を貼ったら腰は熱くなったものの、気になって尻をさわると驚くほど冷たかった。

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西日


 シャッターを下ろしても窓際が明るい。隙間から射し込んだ西日が窓をオレンヂ色に染めていた。
 想わずカメラを手に取りシャッターを切る。そうして昏くなるまで窓際に置いた机に座っていた。
 ずっとずっとこのままで。今もあたしはそう云うことを想っている。

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晴れた日


 晴れた日、弐階の明るさに今日から昼間過ごすのは此処とノートパソコンや裁縫道具を壱階から持ってくる。小さなポットをひとつ購入してもいいだろうか、と珈琲を入れて運んできたカップを両手でつつむ。
 することが沢山。しなくても生きていけるけれど、した方が愉しい。はちみつを詰めたような頭。誰も踊り方を教えてはくれなかった。はじけるような気持ちになったとき他人はどうするのだろう。
 彼はくしゃくしゃの笑顔。そして奇声とも言えるような大きな声を。
 晴れた日は空が近くなったり遠くなったり。今日の空はとても近い。天使が降りてきそうなほど。口遊むのは荒井由実の「ベルベット・イースター」。何でもない日が特別な日になっていく。

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