例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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柚子の砂糖漬け


 煮てジャムにした方が長持ちするのだろうが、いつも傷む前になくなってしまうしと想い今回も砂糖漬けをこしらえる。それにとろける食感より歯ごたえを残した食感が好み。
 皮を剥き細切りにし、袋から実を取り出すと、台所に拡がる柚子の匂い。柑橘類の匂いはあたしを倖せにしてくれる。
 酒のつまみに出したら、いつのまにか彼も此の砂糖漬けを愉しみにするようになっていた。
 今年も柚子を手に入れられたよ、と小皿に盛った砂糖漬けを彼に持っていく。ひとりでに笑顔になっているのがわかる。結構あたし倖せをたくさん持っているかもしれない、と想うとふふっと声を出してまで笑っていた。

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霧の朝


 すぐそこの信号の先が見えない。靄と言うより此れは霧・・・と立ち尽くす。
 カーテンを開け掃き出し窓から覗くと表が白くなっていたので外に出てみたはいいけれど、壱歩も動けない。早朝だしこれほど深い霧なら車両はライトをつけ走っているだろうが、今朝は歩き廻るより想像する方が愉しかった。
 ティム・バートンの或の壱番好きな映画を想う。悲しくて美しい物語。異形とも言える人物。此処に存在するのは佰人だとして、佰人ひとりぼっちがいてもひとりぼっちはひとりぼっち。佰人異形がいても異形は異形。
 霧の中でひとり踊る。「ぼく」は今どんな人間になっているのだろう。見なくてもいいものを気にしてしまう眼。見えた方がいいものが見え辛い眼。佰人の内のひとりと云う見方をやめてしまった「ぼく」。
 菊の花につられたのか、やってきたアブがあたしを邪魔だと言うように騒ぐので、霧が消える前に家の中へ戻ることにした。

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暴言


 出掛ける為服を探していると、あたし宛ての手紙を彼が彼が持ってきた。壱通は文通相手、壱通は縁を切った人だった。
 何故とうに縁を切った相手が現在の住所を知っているのか疑問に想う。今も電話交換手をしているのだろうか。あれからも空いた時間に個人情報を閲覧しているのだろうか。彼にそのことをうちあけていると、彼の携帯に電話が入り、ほどなくし会話中の電話を向けられた。
 無言で手紙に視線を送る彼に相手が誰だかすぐにわかった。何故彼の電話番号まで知っているのかと想いぞっとした。あたしは開口壱番、糞だったか屑だったかカスだったか忘れたが、相手を罵る言葉を吐き電話を切った。
 そうして、そんな言葉は・・・と言う彼に、確かにと想ったところで目が覚めた。

 夜が来て風呂に入り、躯がほぐされるとあたしは歌をうたっていた。自分から出た歌。完成したことはない自分から出る歌。それでも詩だけは残そうかと紙にうつす。
 檸檬。きみが教えてくれた果実。きみが教えてくれたきみ。・・・・・。

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染み


 リトルミイの生成り色のトートバッグに、点々とした茶色の染みができていた。しばらく使っていなかったので、いつ洗濯したのかも忘れている。同じように白いトートバッグにも染みができていた。
 粉の酸素系漂白剤を溶かした水に浸けおきすると、染みは殆ど落ちていた。其の後陽に干すと染みは全くわからなくなった。

 黒い服に白のトートバッグは合う為欠かせなかった。それなのに越してきてからは壱度も使っていない。
 落ち着いたようでいて地に足がついていない日々。

 いつかなんて永遠にやってこない。朝になればまた今日が始まる。
 あたしは今日もほころびを縫い花の手入れをする。

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クリスマス・カクタス


 緩衝材を切り鉢に捲き付け栄養剤を与え、夜は家に入れるようにすると、葉の色が悪くなっていたシャコバサボテンは弐日で緑色に染まってきた。
 父が亡くなり拾伍年、どの鉢も壱度も植え替えをしていないようで根が詰まっていた。参分の壱程度は植え替えできたが、シャコバサボテンは来春になってしまった。花芽はついたので此の冬も花は見られるだろう。クリスマスに開花しているかどうかは疑問だけれど。

 朝晩加湿器が音を立てるようになった部屋。
 鉢植えと亀たちとカエルの人形に彼の寫眞・・・と、皆でまるくなって眠る。大きな樅の樹にオーロラを瞼の裏に描きながら。

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