例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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気分が萎えた日


 歯ブラシを取り替える。それから珈琲豆の入った袋と顆粒のコーンスープの入った袋の封を切る。雑記帳も新しいものにする。
 新たに咲いたうす紅色の菊を赤紫と白の菊を活けた花瓶に足し、寒い日は腰に捲いて使っているリトルミイのブランケットを出す。黒のワンピースの下には薄いタートルネックの瑠璃色のシャツ。藍以外の青は苦手と言いつつ、引き出しにはもう壱枚の瑠璃色。
 小さな缶に入ったアロマバーム。冷蔵庫には柚子の砂糖漬け。
 わけもなく気分が萎えた日、部屋に置いたものをひとつひとつ辿っていく。最後は何になるのかがわかりきっていても。

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クリスマスツリー


 ツリーを箱から出し短いコードを弐本絡める。壱本は白色の電飾、壱本は星形の白色の電飾。セットになっていた色々な色に光る電飾は壊れてしまい棄ててきた。
 小さな赤い林檎と色数の少ないボウルを飾り、試しに電飾を灯す。カエルの人形を誘い、ちゃんと光ったから〇〇ちゃんに見せよう、とふたりで得意気な顔で彼に振り向く。

 箱と中身の一致、一連の動作とすり替えのない言動。

 嬉しいと泣く。ぼろぼろと泪がこぼれる。思い出しては泣きながら笑う。

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檸檬


其々の鍵で同じ扉を開ける
珈琲の匂いと流れる音楽
窓辺にはガジュマルの鉢植え

此処には森や海があふれている
弐足の靴に弐本の歯ブラシ
星の下には壱枚の毛布

疑いを口にしてしまったら
呆れた声で叱って

みずみずしくて酸っぱい傍らの光
きみが教えてくれた果実
きみが教えてくれたきみ


其々の鍵で同じ家に帰る
細い腕が水飛沫をつくる
汚れては荒い息をととのえる

悲しい日は昨日手折ってきた
野薔薇の実を捲いて

開けた窓の向こう雲が流れ
静かに語られる夢

なぐさめるよう遠くまで放られた檸檬
きみが見せてくれた果実
きみの持つまぶしい光

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 少しくらいと想う心は伝わる。
 少しくらいと想う心は不快。
 そう云うとき、またさっと棘を出せるようになった自分。
 此れ以上近付かないでください。
 それくらいでと想う心も伝わる。
 それくらいでと想う心も不快。

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小さな願い


 早朝眠っていることが多くなったが、たまに目覚めてそう冷えていないことがわかると起き出したりもする。
 朝の弱い光、車も人通りも無い静かな脇道、周りを囲む樹木。知らない道を自転車で走るのは愉しい。其れが以前は鬱蒼とした森だったと想われる道なら尚更。

 花なのか、実が割れたのか、点々とした赤い色に自転車を止める。手を伸ばした後ではっとなり元に戻す。有毒と云うことも否定できない。それでもみつめていると、晩秋の朝の空気の冷たさにこわばっていた頬も手の指もゆるんでくる。

 薔薇の実、南天、ノブドウ、・・・。此の季節に見られる筈の実に出逢えていないのが淋しい。ピラカンサス、ペッパーベリー、サンキライ、・・・。どれほど実の生った枝を部屋に置いても飽きることなく、増える毎落ち着いた空間になるのは何故だろう。
 昔から植物に助けられていたように想うが、彼らには人に及ばぬ計り知れぬ力が存在しているのだろうか。存在するなら、あたしにも分け与えてくれるなんてやさしい子だと想わずにいられない。いつかあたしも土塊となるのなら、此の身を植物に使って欲しい。

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