例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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ブルーマウンテン


 此の間購入した店に珈琲豆を注文した。
 今回珈琲専用の袋に入っていたが、焙煎日は記されてなかった。普通に店で買うのと変わりないのは、半額商品だからだろうか。
 豆は驚くまでふくらみはしないものの、普通にふくらむ。味は彼好みの酸味の強い味だった。あまみを感じる後味はあたし好み。
 半額でもなければ購入することなかったブルーマウンテンの豆。これはこれでおいしい、と前回購入し半分残っている豆に首を横に傾け笑う。

 珈琲を淹れる時間は倖せのひと時。元気に起きられる日も、生きていたくないと目覚める日も、束の間無となる朝の儀式。
 おはよう、と言い息をたくさん吸い込むのが、朝。

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一期一会


 中国からいらした方だろうか。やりとりを耳にし、バスの運転手が少し苛ついているのがわかった。彼が橋向こうの町に行きたいことが判り、自分も行くことを告げる。降車するバス停に着いてもふたりのやり取りは終わらず、少ししてやっと彼が辿り着きたい町を知った。
 長い橋を渡っても、また同じだけ歩かなければならない。彼は歩き慣れていないのか、だいぶ遅れてついてくる。彼が辿り着きたい町に行くには更にバスを利用するしかない。
 バス停に着き、どのバスに乗り何時にバスが来るか時刻表を指し教える。すると彼はスマートフォンで撮影していたので、高齢な人でなくよかったと安堵する。時間まで結構あると伝えようとすると、スマートフォンを差し出してくる。バスの運転手とも翻訳アプリで会話していたのだろうが、伝えたいように訳してなどくれない。
 タクシーに乗る、と云う訳に、バス停の隣に止まっていたタクシーの運転手に行先までの値段を尋ねた後、首を振りながら彼に値を告げる。それに対し彼は、バスを待ちます、足が痛い、あなたと逢うまで既に弐キロ歩いている、と言いたいことがわかり、想わず声をあげると彼が笑うのであたしも笑ってしまった。
 薬を飲むので水を買いたい、と言う彼に自販機の前まで一緒に行き別れようとすると、あたしにも水を買ってくれた。それから彼は右手を差し出してきた。あたしも右手を出した。

 残念だけれど、人は虚偽も働く。言葉や便利なものだけに頼りたくない。
 彼は関わりたくない人間ではないと判断することができたので、想う(言葉)だけの親切より行動する偽善を選んだ。
 他人に対し厳しいまでに人を選ぶようになったかと想う自分。そうすることで得るものは逆に清々しいまでの他人の気持ちだったりする。

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ブーゲンビリアの莟


 お礼の品を買ったはいいが、感謝の気持ちが何もしたくない気持ちを越えるまでひと月かかり、やっと先日手紙を出すことができた。それに対し届いた御礼状に壱礼する。
 見れば、冬になり全部葉を落としたブーケンビリアに莟がついている。それもひとつでなく、数多く。
 それにしてもアマリリスと言いブーゲンビリアと言い時期早々で感嘆する。そうしてはひたむきな姿に彼を想う。あれにもこれにも励まされ、あたしは膝を折ることなくいられる。

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真紅


 弐日経ってもラナンキュラスに変わりはなく、愛らしく花瓶に納まっている。驚いたのは芍薬で、更に開き倍の大きさになった。色もより鮮やかな紅になり、存在感が凄まじい。
 壱時赤いものばかり欲しがり、赤壱色の部屋で暮らしたいと想っていた頃があるが、今でも赤いものを見ると安堵感に包まれる。
 父の前に置いた椅子に座り芍薬を眺めれば、幾度も長い息を吐いていた。
 赤。あたしに欠かせない色。いろいろなものに助けられ生きているが、色もまたあたしを助けてくれる。

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あなたがいての


 買い換えては、天板が耐熱になっている冷蔵庫を使っているが、天板の汚れが気になってきた。冷蔵庫はまだ使えそうで、天板にミルクペイントの塗料を塗ってみた。
 灰色の塗料はなく、くすんだ水色を塗ったところ、仕方ないと想えるできあがりになった。ただ上に置いた電子レンヂが重く容易に動かせず、中央に塗り残しができた。見えない部分まできれいにできなかったのは残念。
 よく見ればムラもある。それでも塗る前よりはきれいになった。
 「あなた」がいて保たれている均衡。「あなた」がいての此処の台所。卓や鍋や冷蔵庫を行ったり来たりしてあたしの機嫌も保たれている。

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