例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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日の入り


 降っているのか降っていないのか、判断が付かない空模様が朝から続く。
 傘をさし散歩に出ると、西の空の下の方が朱く染まり始めた。冬至の頃は日が短い。壱時間も歩いていると、西の空の朱い色は消えかかっていた。
 家に着き門扉を抜けると人感センサーライトが照らす。真っ暗になった家の中。内玄関の照明を点けていけばよかったと想う。

 陽が去ってしまうと、真夜中。此処でだんだんとそう云う感覚になっている。亀たちを風呂に入れ、昼に作り置きしたものを食べ自分も風呂に入り、アイスクリイムを食べたりしてくつろいだあとは寝てしまう。
 元々夜は苦手だった。けれどライブハウスに出掛けたり、彼と遊ぶのは愉しかった。クリスマスツリーの明かりを灯し、ときどき夢のようだった時間に浸っている。それから夜中に目を覚ますことがあると、弐階に上がり星を探したり。

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弐年目の


 久し振りに亀と鼻と鼻をくっつけて眠る。亀にとってもあたしにとっても良いことではないと想うものの、眠気で力が抜けると、鼻がふれても頬がふれてもそのまま眠る。
 それほど亀たちをかまわなくなり参年。どれほど放っておいても嚙みつく素振りを見せない。心配なのはまたこっそり彼に寫眞を撮られてやしないかと云うこと。

 面積にしたらとても狭い亀たちの世界。外で生きたらどんなふうにしているのだろう。考えても人間と同じことなのかもしれない。
 此処で暮らすこと。此処で倖せになること。
 此処に来て壱年経った。あたしたちは弐年目の冬を一緒に過ごす。

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冬のひととき


 ひと束漆拾捌圓。上から貼られたシールが売れ残りを語っている。
 細くてなかなか進められないと想いつつ、ベビーアルパカ入りの白くやわらかな毛絲を床に転がす。
 暗くなる前から寒くなってしまった部屋。早い時間から夕食をこしらえ風呂に入り暖めた部屋で毛糸を編む。間違えないように目をとり模様ができるのを何度も確認し、壱日で拾センチも進まない。それでもめげずに編んでいると、淡々と、黙々と、深々と、・・・、と好きな言葉が集まって来る。
 冬のひととき、贅沢な時間。
 此の分だと年を跨ぐだろうな。此の冬は雪を見られるかな。白い毛絲は幾らでもあたしの気持ちを拾ってくれる。やっぱり彼の好きなココアを買ってこようかな。

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ミルクキャラメル


 包みや形や大きさが変わっても、味が変わらないものは嬉しい。
 好きだったアイスクリイムや好きだった抹茶味やラムレーズン味のものは、ラクトアイスに変わったり味が薄くなってしまったり。そうなると弐度と食べなくなってしまう。
 できれば箱入りがいいのだけれどと想いながらも、袋入りで買ってきたミルクキャラメルの封を切る。

 幼少の頃何度も何度も買ってもらっていた。猫が家に来るまで、悲しかったりしたときは必ずポケットに入れていた。
 現れては消えていくいろいろなものを憶えてはいない。どんなに流行ったものも無いに等しく、関わったうえで愛おしさを抱いたものが自分に残っていく。
 味が変わらない限りきっと其れに対する自分の想いも変わらない。

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菊の切り戻し


 菊の花が終わり切り戻しをする。時期は、伍月頃と教えている人もいれば花が終えたあと行う人もいて、よくわからない。冬芽が出てきているので、古い菊は駄目になってもいい覚悟でどんどん茎を切っていく。
 自分の背を遥か高く伸びた菊の茎はこれが菊の茎だろうかと想うほど太く、剪定鋏がなかなか入らない。だったら抜いてしまおうと引き抜こうとすると抜けたものもあれば、びくともしないものもある。切り戻しが終えたのは弐時間後だった。
 小枝のように束ねた茎とひと袋では足りなかった塵袋に、拾伍年植えっ放しの家ってあるのだろうか、駄目にならずに此処まで育つなんて余程環境がいいと云うことだろうか、と塵袋と同じいっぱいになった頭を脇に寄せる。
 大掃除ではないけれど、壱年を束ねてみようと云う気持ちになっている。

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