例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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終わっても櫻


 零れ落ちるのが止まらない。花瓶の周りは八重櫻の花びらで白くなった。片付けるのもやめて、そのままにしている。それはそれで、それもまた美い。
 花びらが落ちても櫻。終えるまで櫻。終わっても櫻。

 成長するにつれ覚えたのは言語化。
 子供の頃からそうだった。萎れた花も枯れた花も好きだった。
 家に呼ぶような知人は此処におらず、指摘されることもない。花びらが残らず落ちるまで飾っておける。

 あたしがすることを不満がらなかった彼。
 櫻・・・、と声を掛けても気にする様子もないので、水を替え花瓶を戻した。

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けれども問題は


 iPhoneがこれほどまで使えない人間もいないのではないかと想うほど、今日も手こずってしまった。
 用紙に比べ、表示される画や文字が少ない。aならaの部分しか表示されない。aと同時にa以前a以降を読みながらaを理解していた自分に気付き、印刷でもしないと無理なのだと判った。

 余計なものがあった方が自分にはいい。
 母親から聞く限りでは幼少の頃の拘りの強さに自身でも唖然とするほどだが、今でもそう云った癖のようなものが残っているように想う。

 「都会では自殺する・・・」、と井上陽水の歌が頭の内に流れる。「けれども問題は今日の雨」。」
 詩も曲もとても好きな歌。そして入り方が自分に重なる歌。

 ニュースを聞きながら残っている塵袋の枚数を気にして、口に運んだつもりのご飯を胸元に落としていた。

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ハレルヤ


 寒がりな大きな亀がいきなり漆つも餌を口にし、唖然とする。

 いつもの店へバケツを覘きに行くと、オレンヂの金盞花が入っていた。金盞花だけの花束といろいろな種類の混じった花束と迷い、いろいろ混じった花束をふたつ買って帰る。
 父の傍に置いた花瓶には金盞花のみを活け、彼の傍に置いた花瓶には金盞花と矢車草、赤と黄のチューリップ、白いクリスマスローズを活けた。

 カタバミ(ハレルヤ)の葉で埋まった家の角と道路際に置いてある鉢植えにピンクの花が顔を出し、春をうたう。
 村上龍の「歌うクジラ」を開きたくなった。

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花冷え


 郵便受けを覗いていると、近所の人に声を掛けられた。彼女はライトダウンの長いコートを着ていた。今晩は冷えるので気をつけて、と夕刻のニュースが教えている。
 亀たちをぬるま湯で洗い、寒がりな大きな亀の方をハーフケットに包む。
 冬用の寝間着に冬用のシャツ、冬用のジャケットが手放せず、風の音を聞きながら未だに編みあがらないカーディガンを指でつつく。
 やわらかな春キャベツで作ったのはポトフ。
 此の町に来て医者にかかったことがない。此の緊張が壱日でも長く続くようにと想い、電気ストーブをつけ足元を温める。

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軽さ


 もう少し整えようと鋏を入れた筈が、肆センチ落としていた。昨日肆センチ切り軽くなった頭が気に入ったらしい。
 短くすると髪に癖が出る。此の髪を何人かの美容師さんは真っ直ぐだと言った。もしかしたら寝癖なのだろうか。起きる都度惨事とでも言うべく状態になる寝床を浮かべ、髪を濡らす。それからホホバオイルをつけ最後に手でぐしゃっと握る。毛先が揃っていないのも癖も気にならなくなる。
 リトルミイに似せた髪はできなくなってしまったけれど、まだ後ろで結べる。あと肆センチは切っても大丈夫そうだと、日毎軽さを好むようになっている自身に笑う。

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