例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

雨と白い靴


 外は雨が降りてきていた。汚れてもいいと想った合皮の靴は、白いものだった。靴を選ぶのに然程天候など気にしないのだが、新しい靴を濡らしたくない気持ちがそうさせた。
 バスに乗車する為、橋を渡り土手を歩く。菜の花は終わりすかんぽに彩られている。雨は本降りとなり、肆拾分の道のりが靴を汚す。
 以前履いていたブーツを思い出す。あれは足の指を骨折する前のことだ。雪の日に履く靴を探していたのだが、今よりサイズが0.5センチ小さく、なかなかみつからなかった。やっとみつけた大きさの合うブーツの白っぽい色に躊躇していると、気に入ったならいいんじゃないと言い彼が買ってくれた。

 帰宅し汚れた靴を脱ぐ。外側をざっと外の水道で洗う。
 コンバースの白い布靴をまた買おうか、そして雨の日に履こうかなどと想い。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

意味より


 アマリリスとブーゲンビリアが同時に開花し、玄関先は壱気に華やいだ。
 繰り返される命。植物、花、・・・。誕生から死までつきあい過ごしていると、夢だの目的だのと附加したがる人間が滑稽なものに想えてくる。
 何ものにも何かしら意味は存在するのだろうけれど、意味より個々の内側に備わった力を、外側に染み出した其れを、眺めていたい。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

修正


 対処法を誤ってしまい首から肩にかけかなりな痛みに襲われる。
 左眼が充血していると想ってはいたが目薬をさし、壱日かけ家の窓を拭いた。其の後首から肩にかけ張りを感じ母の湿布薬を拝借し貼ったのだが、此れが誤りだったらしい。貼ってもじんじんとした感触が得られず、其れが温感タイプの湿布薬だと気付いたときには遅かった。

 炎症し熱くなった首と肩に手を置く。壱瞬軽くなる痛み。こんなときは他人に驚かれるくらい冷たい自分の手がいとおしいものになる。
 猫のように亀のように声を出すこともなく、患部を冷やしひたすらじっとしているのが気持ちいい。耳に入るのは時計の音、冷蔵庫の音、家がきしむ音、風の音、・・・。
 立ち上がり珈琲ポットに手を伸ばす。鳥のさえずりが自身の律動となっていく。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

夜明けの夢


 帰宅すると、家が幼少の折住んでいた家に変わっていた。また父が家族に相談もなしに、と想ったが怒りは湧いてこなかった。縁側のある家は、それだけであたしに幸福感をもたらしてくれる。
 部屋数はよっつ。そして土間があった。土間に置いた椅子には父が座っていた。
 それだけの夢。時計を見ると、弐時間近だった。

 ふたつめの夢は、弐度目の引っ越しで住んだ部屋の夢だった。
 布団が弐組敷かれ、彼が既に横になっていた。これどうしたの、温かいね、と言う。あたしが実家から貰ってきた青いタオルケットが気に入った様子だった。
 みっつめの夢は、高校の頃の通学路を歩いている夢だった。亡くなった彼を想いうたっている。歌は自分で即興でこしらえたものだった。

 目覚めると夜が去ったらしく部屋の中は薄っすらと明るくなっている。
 初めて最後まで曲を作ることができたと想い、思い出そうとしたけれど、できなかった。

 淹れた朝の珈琲がおいしくできたことが嬉しく、今日もちょっとだけ泣いた。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

ブルーマウンテン


 此の間購入した店に珈琲豆を注文した。
 今回珈琲専用の袋に入っていたが、焙煎日は記されてなかった。普通に店で買うのと変わりないのは、半額商品だからだろうか。
 豆は驚くまでふくらみはしないものの、普通にふくらむ。味は彼好みの酸味の強い味だった。あまみを感じる後味はあたし好み。
 半額でもなければ購入することなかったブルーマウンテンの豆。これはこれでおいしい、と前回購入し半分残っている豆に首を横に傾け笑う。

 珈琲を淹れる時間は倖せのひと時。元気に起きられる日も、生きていたくないと目覚める日も、束の間無となる朝の儀式。
 おはよう、と言い息をたくさん吸い込むのが、朝。

拍手

      郵便箱