ハルジョオン
2024, Feb 21
雑記帳の隅に花束を抱えた女の子を落書きしていたら、ハルジョオンを思い出した。何処にでも咲いていると想っていたのに、もう随分見ていないような気がする。
小さい頃住んでいた家の庭にも、ハルジョオンが咲いた。摘んでも、抜いても、いつのまにか現れて春を教えてくれた。
けれど、春は淋しいから好きじゃなかった。昼間どんなに晴れていても 午后参時にもなれば曇ってしまう。正露丸の独特の匂いと苦い味と春の夕暮れは似ていると想った。春の夕暮れほど悲しいものはないと想っていた。そんなとき猫をぎゅうっと抱いても怒らなかったけれど、或の淋しさを猫も感じていたのだろうか。
あたしが落書きする女の子は大抵裸足だ。自分がそうだったから。
小さな頃は猫と一緒に縁側から家の出入りをしていた。畳ですると叱られることも、縁側では足跡をつけても摘んだ花を置いても、後できれいにすれば其れで済んだ。
庭にはすみれも咲いた。野に咲いた花と庭に咲いた花、店で売られている花と庭に植えた花、どれが一緒でどれが違うのかずっと知らなかった。
鼻先につく風の匂いや手についた土の汚れ。無雑作な春と共にハルジョオンはあった。
ユーミンの「ハルジョオン・ヒメジョオン」がたまらなく好き。あれがあたしの知る春。
熟れ過ぎた夕日は今にも崩れぼたぼたと落ちそうで、あたしは壊れそうになる。