例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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プリンとハイエナ


 激しい雨が降る。壱昨日から咳が出るようになり、気温が下がると心配になる。せきぜんそくの文字が頭を掠め、明日の歯医者の予約が気が気でならない。
 冷えたのだろうかと想いシャツを重ね着し、トトロの綿毛布を膝に掛ける。そうしてカエルの人形を抱きうーんと考えているうち、夜横になっても咳が酷くなっていないことに気付く。
 軽いので普段鼻炎があることは忘れている。たぶん鼻炎からきているのだろう。此の間日光アレルギー対処に貰ってきた薬で事足りる筈だと服用すると、咳は拾数分もすると治まった。

 彼はあたしが臥していると、薬の時間だと言い必ず水やプリンを持ってきてくれた。それより何よりあたしは何時間でも眠っていたかった。起こさないで欲しいと其の都度御願いしていたことを思い出す。
 彼が食事で躯を守っていたなら、あたしは睡眠で、眠ると調子が戻ることが多い。最近玖時間寝ていないせいか昼間どうしても眠くなる。昼寝したあとは少し調子が良くなる。

 具合が悪くなっても、もうプリンは眼の前に出てこない。其の代わり此の頃伏せることがなくなった。
 目を閉じてハイエナを想う。獣のしなやかさ。あんなふうな眼をしてあんなふうに草原に立って、あんなふうに風を受けたい。

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雑記、壱日


 弐台使っていたカメラの画像はばらばらに保存されていた。ふたつの日付を合わせアルバムに入れるのに、幾度もやり直すことになった。そのうえ用紙の裏表を間違えて印刷したり、束になっている用紙の上に置かれた厚紙を取らずにプリンターに設置しまったり、紙詰まりに泣きながら無理矢理手を入れ引っ張って用紙を取り出したり、気が付くと昼食を忘れてふらふらになったり、覚え書きを見直し今日で漆日間こう云うことをしているのだとわかった。
 インキ替え、用紙の設置、寫眞印刷。コピーを取るしかできなかった自分がそれだけでもできるようになったのだから、まあいいかと想い明日続きをと想ったところで、突然ワイヤレスマウスが壊れ途方に暮れた。

 使ううち物が壊れるのは当然だとわかっていても、いざ壊れると予想外な事態だと想ってしまう。此の考え方の癖は直そう。
 夫の友人にわからないことを尋ねると、画像付きで教えてくれた。「Bluetooth対応の買うてパソコンのUSB口に受信機を差したら、設定せんでも勝手に認識してくれるで」と云うので、パソコンを見たら受信機が既に差し込まれていた。

 友人は文通相手と等しくなり久しい。一緒に買い物に行ったり御飯を食べたり、電話を掛け合ったり家に呼んだり呼ばれたりと云うことはない。それでも何かいいものが行き来できる関係が嬉しい。
 けれど、それとは異なる夫の友人たちのつきあいも温かく素敵に感じる。

 伍月は寫眞の整理とCDを聴き残すものの決定するのに当てようと予定していた。見通しが立ち安堵する。

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余韻


 寫眞が余りにも少ない年がところどころあり、喧嘩して関係が悪化した年だったろうかと想ったが、そうでなく親が病に伏せた年だったことを思い出す。
 あたしたちの寫眞が多い方なのか、少ない方なのか、わからない。ただ、壱枚の寫眞が多くを語ることもあることを知っている。

 友人宅やカラオケルームで寫した彼は笑ったりお道化たりしているのに、ふたりで遊んでいるときに彼を寫した寫眞に、彼の崩れた表情は年を追う毎にみつからなくなった。
 彼が寫した寫眞に彼の他の誰にも見せない自分の顔を教えられるように、また彼もそうだったことを教えられる。

 今朝は試供品で貰ったローズティーを淹れる。
 ひと口含むと酸味があり、あなたの好きなキリマンジャロの珈琲と同じで酸味を感じるお茶だよ、と彼に差し出す。ふた口めを含もうとするとあまい味を舌に感じた。

 時々昔の知り合いや契約上の付き合いの人や彼の会社や医師や叔父夫婦や彼の妹弟を思い出しては、心が折れそうになる。
 どんな日々もあまい余韻になるように、と寫眞を脇に泣きながら笑う。

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ひとつひとつ


 夫の友人が車で弐時間かけ線香をあげにいらしてくれた。
 生年月日が同じだそうで、そんなところから仲良くなったのだろうか。
 去年自宅を改築したが、壱時離れに引っ越す際半年かかったと話す。田舎の家は物が多く処分が大変だったと言い、夫の部屋を見ていろいろ教えてくれた。

 少しづつわかっていく。小さなひとつひとつを集めていく。其れが或る程度溜まったとき形になり現れる。そうして自分はやってこれた。
 夫の友人が、家族とは休日が異なる為ひとりで引っ越し作業をしたのだと聞いたとき、あたしもと想えた。

 先ずは寫眞。
 壱枚できる都度、壱枚アルバムに入れる都度、形に近付いていく。行為を含めひとつひとつがいとおしくなる日までやめない。

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最良


 日付を確認し埋めていくアルバム。見落としは数枚あり壱冊できあがるのに壱日要してしまった。夕食を用意するには時間がありインキを交換しようとすると、使えないものだとわかる。以前のプリンター用のものがひと揃え残っていたようだ。
 明日買いに行こうと想っていると、取り敢えず防犯の為に窓だけでもと依頼した改築の担当者から連絡が入る。念の為もう壱度寸法を、と言われ、弐度目の確認に、敏速とは言い難いけれど慎重な人に依頼してよかったと想った。母も自分も改築の件は敏速さをそれほど望んでいない。現在の暮らしぶりにおいて最良のものを、と云う考えで一致している。

 寫眞の整理より他に整理することはあるけれど、壱番は寫眞。其れが今の最良。自身を保つために欠かせない。
 何枚もある寫眞は、自分でしか、彼でしか、わからないことが寫り込んでいる。ぽろぽろと今日も泣きはしたものの、此れを見て倖せと想うなら明日はもっとそう想うだろう。

 百日紅の咲く道で自転車を止めた彼。リュックサックから水筒を取り出そうとしているのだろうか。手前は白く、奥は青い木陰。景色に溶けそうになっている彼に、いい寫眞だね、と寫したのは自分なのにそう言って笑う。
 或のときこうすればと云う想いもあるのは確か。其れは齢を重ねて想えたことだと云うことも確か。後悔はひとつもない。

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