例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

記念日


 明け方に夢を見る。旅行に出掛けようとする夢だった。
 車の後部席に彼とあたしの兄とあたしで並んで座っている。前にいるのは身内には違いないが、はっきりしない。兄はめずらしく饒舌になっていて、彼と頻りに話をしている。車酔いするあたしはすぐに気分がすぐれなくなり兄に寄りかかっていたが、おにいちゃんの服に吐いていいよねとでも言うように久し振りで逢った兄に甘えては膝に乗ったり首に手を廻したりしていた。
 やがて施設のような宿泊場のようなところに着くと、兄と彼はあたしを置いて先にいってしまった。
 目が覚め、夢に出てきたのは自分以外は亡くなった人ではなかったかと驚く。

 花瓶にはおとつい摘んだ可愛らしい花々。今年初めての麻のパンツに今年初めてのアイスクリイムを入れた珈琲。どれも弐枚づつ買った布のコースターを引き出しから取り出し、どれがいいか彼に尋ねる。特に何もなくいつもと同じような日。
 男女問わず言葉を差し出してきた人はひとりもいなくなってしまったと云うのに、約束を交わしたわけでもない彼と今も一緒にいる。遺された覚え書き帳を開きパスワードのひとつを眼にしたとき、彼がふたりの記念日を憶えていたことを初めて知ったけれど、あたしが憶えていたことを彼が知っていたかどうかはわからない。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

成長


 届いた申請書を町役場に持っていく。
 わからない箇所があり空白のままにしていくと、そのままで大丈夫だと言われた。母の在宅中は間に事業所が入り申請もしてくれて助かっていたが、自分で動かないとちょっとしたことがわからずだめだなと想う。見本の用紙がなく余計わからなかったが、もしかしたら事業所を介さず申請する者は殆どないのかもしれないとも想う。
 ただこれまで住んでいた町のように何処に行っても然程込み合ってなく、何をするでも半日がかりと云うことはなくなった。
 郵便局にも行き用事を済ませると昼時には帰宅できた。

 午后はペンキ塗りをした。
 北側のシャッターの柱の錆がずっと気になっていた。錆を落とさず塗れるペンキがあると知り、柱の表側だけでも錆付きが止まればそれでいいと適当に塗っておいた。
 ムラは仕様がない。ぱっと見るときれいになっている。

 子供の頃は完璧にできないと気持ちが悪くて仕方なかったのに。普通は成長するにつれきれいに仕上げるようになるだろうに。逆だなと想ったが、あたしも随分成長したものだと取り敢えず感心しておいた。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

川べりの花に


 川べりのあちこちに咲く野薔薇のどれか壱本くらいは手折れるのではないかと想っているのに、近付いてみると手が届く枝は壱本もない。肆日前より花が開き樹も大きくなったのを見てこれならと想ったのに、全く手は届かなかった。
 肆日前野薔薇はあきらめ、初めて見る紫の花を弐本手折ったが、今日も初めて見る樹木の枝を気付くと夢中で手折っていた。其れも弐本。香りのするうす紫の小花がたくさんついている枝だった。

 殆ど往来がなく、ましてや立ち止まる者などいない場所で、花はいつ其処に根付いたのだろう。
 子供の頃道端に咲いていた秋桜を、壱本引き抜き家に持ち帰り庭に植えたことを憶えている。やがて畑ひとつほどくらいまで増えた秋桜は手折っても手折っても絶えることなかった。父はよく怒らなかったと想う。またそこまで放っておいてくれたものだと想う。其のことを考えてもあたしにはあまかったことが想像できる。

 枝壱本でいっぱいになった花瓶。そこに鉢植えに咲いたピンクや紫の小花を差し込み、父と彼と其々の傍に置く。何も言わずに放っておいてくれることがわかっているので、あたしはくすくす笑う。
 それにしてもミツバチでもあったなら花粉を運べるだろうに。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

リラックス


 弐階はともかく、壱階はどの部屋にいても涼しく、家の中にいるのが快適になってきた。冬になったら、夏になったら、と考えるには今がいい時期で、台所の家具の配置を変える。
 電気ストーブを置くでも扇風機を置くでも椅子は絶対此の位置だろうと、巻き尺を持ち出しまた壱センチ単位で決めているなあとは想ったが、性格は直らない。している最中に細かい性格を意識できるようになっただけでもいいだろう。トイレを忘れてしまうような過集中にはならずに済んでいる。
 問題はリラックス。彼と一緒なときはできるのに、人形を抱こうが花に水やりしようがひとりのときくつろいだ気になれるのは壱、弐分。無いよりはずっといいと、卓に置いた彼の寫眞の後ろにをペッパーベリーの乾燥花を入れた小さなバケツを持ってきた。
 レエスの絲で花瓶敷きを編んでみようか。壱、弐分の時間は変わらなくても濃厚な時間になら変えられるかもしれない。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

いい夢を


 彼と彼の友人たちとキャンプに行ったようだった。
 帰宅し彼が入浴している間にリュックサックの中身を整理しようとすると、彼のリュックサックには大量の食材が入っていた。余ったものを頂戴したのだろうが、食べきれないほどのおむすびも入っていた。
 どうする気だろう、どうしたらいいのだろう、と悩んだところで夢から覚めた。

 思考の癖はなかなか抜けない。答が出ていることでも悩むことから始めてしまう。けれど、悩んでいる時間は以前と比べれば随分短くなった。
 それより夢でも束の間でも彼の姿を眼に映したことの方がだいじ。そう想ったことで悩む時間はまた少し短くなったろうか。

 冬用の羽毛布団を夏用のものに替える。あちこち開けた窓から風が入ってくる。
 いい夢を見よう・・・。自身でどうできるわけもないのに、つぶやいては笑う。

拍手

      郵便箱