例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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物音


 真冬になり屋根から伝わってくる不快な音が消えた。何処に行ったのか、真冬は鳩がやって来ない。静かになったと想っていたら、ときどき夜中に物音がするようになった。真冬は猫も寒さで感覚が鈍るのだろうか。
 夜は家の玄関前が猫たちの通り道になっている。夏はそんなことなかったのに、朝見に行くと脇に立て掛けたデッキブラシやスコップが倒れていたりするようになった。

 鳩たちが立てる音はともかく物音は愉しい。叔父夫婦に頻繁に空き巣に入られ壱時は物音は全て開戦の調べにしか聞こえなかったが、やっと以前のように物音を愉しく感じられるようになってきた。
 家の柱の軋む緊張したような音、飽きたとでも言っているような犬の妙な鳴き声、菊の花の周りを飛び廻る忙しない虻の羽音、参年ほど前までははっきりと聞こえていた蛙たちの合唱、アスファルトを転げる落ち葉の乾いた音、耳ばかりでなく胸まで撫でてくれるような雨音、加湿器が湯けむりをあげるときの勢いのある音、・・・。それらを耳にしても鳥肌を立てなくなった腕。

 参時のお茶の時間にまるい缶からひとつチョコレイト菓子を取り出す。包みを破るときのカサカサした音にくちづけし菓子を口に入れる。音もまた味わうものだったと改めて気付かされる。

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