例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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布団の中を覗いても


 何度も何度も想ってしまうのは仕方のないことだろう。

 布団の中へ猫が入っていく。透けた躯が旅立った者なことを教えている。ちょっと大きな猫。薄く茶色がかった毛並み。あのこかもしれないと想う。
 小さな子供だった自分にとりあのこはともだちであり姉でもあった。ごめんねとありがとうの想い。
 今でも心配してついていてくれるのだろうか。口を突いて出るのはごめんね。・・・とありがとう。

 布団の中を覗いても猫の姿はなかった。手を入れても感触は得られなかった。束の間のできごと。幻を見ていたのだろうか。ただ布団の中は妙に温かく、不思議だと想うばかり。

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袢纏


 其れが手縫いで中身が綿だと判ったとき、傷んだ其れを直そうと想った。
 尻まで隠れる長さの袢纏はいったいいつ誰がこしらえたのだろう。
 子供の頃、母方の祖母がこしらえたものを着ていたのを憶えている。弐度こしらえてもらった憶えがあるので、実際は其れ以上だったろう。
 祖母がこしらえたものにしては縫い目がお粗末だが、母が直したのかもしれない。それとも伯母のおさがりなのだろうか。
 布を何処で調達しようか。自分にできるだろうか。してみようかと云うことを新たにみつけ逸る胸。明日なんてもういいと想ったり、明日はパンを買いに行こうと想ったり、たぶんプラスとマイナスの境界上にあたしは今いてたくさんのことは・・・、そんなこともと言われるようなこともできないけれど、後退もしていない筈。
 椅子から立ち上がり長い息を吐き大きく息を吸う。昨日町役場に行った際、令和7年と書いてきてしまったことを思い出し。

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いつのまにか


 毎日のように火災発生の町の放送が流れている。風の強い日、火の粉は何処まで飛ぶのだろう。其の都度鎮火の放送に安堵する。
 実際に焔が飛ぶ光景を眼にしたことはないけれど、真っ赤に染まった映像は悲しみと云うひと言では表せない。
 いつのまにか余りにも吹き荒れるようになっていた風。余りにも烈しく降るようになっていた雨。余りにもぎらぎらと照りつけるようになっていた太陽。
 抵抗の術も知らず、家の周りに棄てられた煙草の吸殻を拾う。其れを悲しみと呼びながら。

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カラフル


 日当たりのいい弐階の部屋に干した洗濯物は白と黒いものばかり。乾いてたたんだ洗濯物も白と黒いものばかり。
 母の入院後も春物、夏物、秋物、冬物と代わる代わるハンガーラックに掛けてきた。自分と違い多彩な母の衣服をどう並べて掛けようか考えてしまうこともあったけれど、母ならそういったことは全く気にしないだろう。自分の肆倍も伍倍もある衣服に想う。
 どれも勝手に着てもいいと言われたことを思い出し、ハンガーから壱枚外し躯に当てる。好きな麻の服とは言え、翡翠色の華やかなツーピースを自分が着ることはあるだろうか。
 持ち主不在の部屋は相変わらず色が溢れ、ちっともしんとなどしていない。

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黒く塗れ


 スタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」をやっと観ることができた。他の知られた作品より、自分には壱番心に残ったものになった。最後にローリング・ストーンズの「Paint It Black」が流れるのも大きい。
 やりきれない感情がときどき表に出てくる。表に出てきたときは表現することを選んでいる。自分の場合、絵、寫眞、詩文、とだいだい其のみっつのうちのどれかになっているけれど、どれにもならないときは思い出した歌を口遊む。「If I look hard enough into the setting sun ・・・・・」
 此の頃歌を口遊むことが多くなった。

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