例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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黄水仙、白水仙


 白梅も蠟梅も咲き続けてはいるが、半分ほど花を落とし淋しくなってきた。まとめて背の高い花瓶に活け、父の傍に置く。新たに買ってきたのはかすみ草と黄と白の水仙の花束。其れを背の低い花瓶に活け、彼に、どう?、と言い傍に置く。
 数日前買ってきた線香も水仙の香。
 彼と遊びに行った水車のある公園に咲いていたいた水仙を思い出す。
 明日は立春。移ろう陽射し。冬の終わりの匂いが部屋に拡がっている。

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月と星


 月がどっちの方向に昇るのかわからない。
 夕刻家の周りを歩くが、月はどの方角にも見えなかった。
 胸からRCサクセションの「エンジェル」があふれそうで、歩道橋まで行くのはやめてしまった。
 ひとつだけ見えた星が今日のともだち。家に入るまでずっと頭上で光っていてくれた。

 拾回の内、陸、漆回は壱度で目的地に辿り着けたことのないような自分。そして、道すがら必ず何かを拾う。其れはどれも素敵で・・・。運がいいのか悪いのかよくわからない。
 彼と一緒だと大抵回り道になったけれど、其れも愉しかった。思いがけず拾うものが自分は好きなのだなとつくづく想う。

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時計の狂い


 公園を抜けると佰メートル先を走っていくバスがあった。始発の停留所でもあり早発は有り得ないともう壱度腕時計を見る。発車時刻まで参分はあり呆然とした後、歩き出す。
 同じ路線のバスは弐時間、異なる路線のバスは伍拾分待ちとなる。風もなく陽射しがあり暖かな午后、散歩を続けるのも悪くない。

 丗分も歩いた頃気持ちが落ち着くと、腕時計が遅れていることが判った。
 弐、参分進んでいたのにいつのまに遅れたのだろう。確か弐、参年くらい電池は持つ筈なのに。

 散歩したことにより、こちらから病院までのバスの道程と病院からこちらまでのバスの道程と停留所と停留所のだいたいの距離が摑めた。予期せぬ出来事が起こっても、なんとかなりそう。
 遅れた時計。大好きなリトルミイからの贈り物だと彼女が描かれた腕時計を頬に当て、途中の停留所で次のバスを待った。

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布団の中を覗いても


 何度も何度も想ってしまうのは仕方のないことだろう。

 布団の中へ猫が入っていく。透けた躯が旅立った者なことを教えている。ちょっと大きな猫。薄く茶色がかった毛並み。あのこかもしれないと想う。
 小さな子供だった自分にとりあのこはともだちであり姉でもあった。ごめんねとありがとうの想い。
 今でも心配してついていてくれるのだろうか。口を突いて出るのはごめんね。・・・とありがとう。

 布団の中を覗いても猫の姿はなかった。手を入れても感触は得られなかった。束の間のできごと。幻を見ていたのだろうか。ただ布団の中は妙に温かく、不思議だと想うばかり。

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袢纏


 其れが手縫いで中身が綿だと判ったとき、傷んだ其れを直そうと想った。
 尻まで隠れる長さの袢纏はいったいいつ誰がこしらえたのだろう。
 子供の頃、母方の祖母がこしらえたものを着ていたのを憶えている。弐度こしらえてもらった憶えがあるので、実際は其れ以上だったろう。
 祖母がこしらえたものにしては縫い目がお粗末だが、母が直したのかもしれない。それとも伯母のおさがりなのだろうか。
 布を何処で調達しようか。自分にできるだろうか。してみようかと云うことを新たにみつけ逸る胸。明日なんてもういいと想ったり、明日はパンを買いに行こうと想ったり、たぶんプラスとマイナスの境界上にあたしは今いてたくさんのことは・・・、そんなこともと言われるようなこともできないけれど、後退もしていない筈。
 椅子から立ち上がり長い息を吐き大きく息を吸う。昨日町役場に行った際、令和7年と書いてきてしまったことを思い出し。

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