例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

きゃべつの青い葉


 ざっくり切った豚バラ肉と外側の青い葉を参枚ばかり取りざくざくと切ったきゃべつを炒める。味付けは塩。豚バラ肉できゃべつを、或いはきゃべつで豚バラ肉を箸で捲くようにして口に運ぶ。苦手な肉もこれなら食べられる。
 レタスの外側の青い葉も同じ。捲くように、絡ませるようにして肉と一緒に食べる。
 トマトも胡瓜も苦瓜も青臭いと想ったことはなく、そう云うものを好んで食べているかと想う。

 春と夏は何処も彼処も緑。すぐに草でいっぱいになってしまう庭。其の壱角に竹林。庭の向こうに見える道の向こうには杉の森。燐家の畑。
 草が生えているのでたいして服が汚れないから大丈夫とでも想っていたのだろうか。気が付いたら遊んでいる途中で電池が切れたかのよう草の上に寝転んでいる子供になっていた。
 遊びともだちは猫。彼女がときどき草を食べる様子をじっと眺めていた。きゃべつの青い葉もレタスの青い葉も、或のときの猫の匂いがちょっとする。

拍手

      郵便箱


 柚子の匂いが台所に満ちる。
 ふかふかのシーツを洗濯することも、きゃべつを買うことも、年末に買った柚子を砂糖漬けにすることも今日になってしまった。南天の葉はひと枝を残し落ちてしまい、花瓶から抜かれ乾燥花になった実と葉がくすくす笑う。しっかりものの蝋梅だけは未だに凛とし花も匂いもそのまま。

 冬になり毎日のように寝坊している。丗分目覚まし時計を遅らせたのに、目覚まし時計の音で壱旦目覚めてもやはり其の後丗分はうとうとしてしまう。神経質で細かなところが気になり何をするでも人壱倍時間が掛かるのに・・・。
 傍から見たらのんびりした朝、ゆっくりとした時間の流れ。本人はてきぱき動いているつもり。此の差異はすっかり気にならなくなったものの、玄関を染めるまぶしい光には慌てる。部屋に入れた亀たちと鉢植えをひとつひとつ運びながら、おはようとごめんねを繰り返す。

 朝。何度迎えても新鮮で、もぎった柑橘類の匂いが辺りに拡がるような壱日の始まり。何度迎えても其の中で死にたくもなればそうでもなく、新たな自分が始まる時間。

拍手

      郵便箱

季節は繰り返しても


 朝の町にほんのひとときちらついた雪。
 膝掛けは亀に貸してしまったので、籠から新たに壱枚出すことにする。ラムズウール100パーセントと表示された其れを、何度か腰に捲き付けてライブを観に出掛けたりもした。
 此の冬は寒い。アルパカ入りの毛絲が残っていたけれど足りるかだろうか、と心配しつつセーターを編む気になっている。
 季節は繰り返しても少しづつ様子が違う。
 元は伯父のものだったと想われる黒いジャケットに腕を通し、ぼく、とつぶやく。髪を短く切って仔犬のようにはしゃいでみようかなどと想う冬。眼にしたもの全て笑えたらいいのに。スープカップにさえ悲しみを見てしまう。

拍手

      郵便箱

こんな日


 風呂あがり、冷たいヨーグルトがおいしい。
 廿時前だからと自身に言いわけし、チョコレイトをひと粒口に入れる。
 冬になり就寝時は早くなり起床時は遅くなったのに、昼寝までしてしまった。
 こんな日もあるよ、と蜜柑まで食べる。
 いっとうなかよしのカエルの人形と長い間抱きあった後、長い長い溜息をひとつ吐くとこんな日はどうでもいいことになった。

拍手

      郵便箱

静物と記憶


 壱年経っても先に進まない手紙は、便箋に折り目がたくさんついてしまった。作業場にしようと考えた弐階で、冬のやわらかな陽射しの中にただ立ち尽くす。
 押し入れを整理したり、棚をふたつ並べ其の上に板を置き作業台をこしらえ、壱階から机や電気ストーブを持ってきたのに、立ち尽くしていることの方が多い。

 カーテンを染める光や床に落ちた光。茶色になっても棄てずにいる紫陽花の乾燥花やハンガーラックに掛けたお気に入りの上着。何度も眼にしているものを今日も眼に入れる。そうして静物と呼吸を合わせてみる。
 動いていないからといい決して動いていないわけではないように想う。光を受け陰影を作ったり、色褪せ形を変えたり、其処には自分には聞こえないわからない言葉がある。彼らも自分と同じに記憶を残している気がする。
 ひとつでありひとりの個は、静物も自分も・・・。

拍手

      郵便箱