例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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元気でもないけれど「元気」


 袋を開けるとかぐわしい匂いがした。豆を手動のミルに移し挽いていく。豆によって大きさが違いミルの合わせがうまくできなかったけれど、やっと好みの中挽きで挽けるようになった。
 じっくり蒸らしゆっくり湯を注いでいく。肆日振りの珈琲はあまい味がした。

 少し不安だったけれど、病院の面会は自転車を走らせた。
 移動後の部屋は今までの部屋より大きいのか、ベッド周りに充分なゆとりがあり、窓も大きく感じられる。そして陽射しが入り明るい。
 窓際に横になっている母の足元を陽射しが照らす。これから暖かくなるからねと今日も花瓶に活けた水仙と菜の花の寫眞を見せると、今日もにっこり彼女は笑った。
 ありがとう。また逢いましょう。と帰り際交わす会話。
 誰にも言っていないけれど、主治医の見立ては晩秋の頃だった。

 彼女もあたしも、元気でもないけれど「元気」。おそらく多くの人も。
 母を撫でてきた手で、今朝珈琲を淹れた手で、自分をたくさん撫でた。

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模様替え


 好きな布を垂らす。目隠しにもなり、あたしを笑顔にもする。
 気になっていた動線を大胆に替え、家具の並びも替える。利便性も居心地の良さも、暮らしてみないとわからない。

 弾んだ気持ちのまま、味戸ケイコさんの絵を自室の入り口に飾った。
 夕暮れに立つ少女の絵と一瞬迷ったけれど、美しい光の中に座り込む少女の絵を選んだ。

 行ってまいります。ただいま。
 明日からまた始まる。

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心象


 珈琲を飲むのも菓子を食べるのも、昨日に続き休み。
 鉛筆を持つのも雑記帳を開くのも、いつもの半分の時間。
 充てるのは睡眠。
 昨晩同様今晩も拾弐時間睡眠をとろうと想う。

 溜まった塵を棄てるように自分を削ぎ落す想像。
 いつの間にかリトルミイができるようになっていた髪。
 明日元気になったらちょっと部屋の模様替えをしてみよう。
 きれいな赤い布が眼をおおう。

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天国の日々


 横になっていた躯を起こし胃に少し食べ物を入れ、壱日限りと記された葉書きを手に出掛ける。上着の要らない日。素直に帰ってこようと想っていたのに、回り道をしたくなる。
 土手の道を歩くのに、なんていい日なんだろう。誰も歩いていないなんてもったいない。土手下には車が数台停まっているが、魚釣りにでも来たのだろうか。
 お弁当がどうのと、また彼とカエルは話している。其の横であたしは菜の花摘みにいそしんでいる。

 補充したエネルギーを使い果たし、菜の花を活け終わると立っていられなくなってしまった。仕様がないなあ。耳元で彼とカエルの声がする。
 いいの、天国の日々みたいな時間がだいじ。そう言って躯が冷えるまで床に横になっていた。

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電池切れ


 夕食後暫くすると腹痛を起こす。トイレでうずくまっているうち気分が悪くなり、寝間着がびっしょり濡れてきた。
 トイレを出て隣の母の部屋の床に横になる。寒さに襲われ炬燵布団を引っ張りくるまる。苦しいと想っていると吐き気をもよおし、トイレで吐くと幾らかすっきりした。
 トイレを出てまた床に横になっていると落ち着いてきたので、自室に戻り上だけ着替え布団に横になる。
 それで済んだ。
 ノロウイルスでもインフルエンザでも胃腸炎でもなさそうで安堵する。

 天気や起床時間、食べたもの、壱日のできごとをざっと記した覚え書き帳を開くと、この壱週間空白になっていた。昼間眠気に襲われ横になったとき、想っていたより弱っていた自分に気付けばよかったのだろう。
 体力や気力が10あったなら10全部使ってしまう自分。過集中こそだいぶ直ったけれど、途中で止める感覚が摑めずにいる。

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