元気でもないけれど「元気」
2026, Feb 19
袋を開けるとかぐわしい匂いがした。豆を手動のミルに移し挽いていく。豆によって大きさが違いミルの合わせがうまくできなかったけれど、やっと好みの中挽きで挽けるようになった。
じっくり蒸らしゆっくり湯を注いでいく。肆日振りの珈琲はあまい味がした。
少し不安だったけれど、病院の面会は自転車を走らせた。
移動後の部屋は今までの部屋より大きいのか、ベッド周りに充分なゆとりがあり、窓も大きく感じられる。そして陽射しが入り明るい。
窓際に横になっている母の足元を陽射しが照らす。これから暖かくなるからねと今日も花瓶に活けた水仙と菜の花の寫眞を見せると、今日もにっこり彼女は笑った。
ありがとう。また逢いましょう。と帰り際交わす会話。
誰にも言っていないけれど、主治医の見立ては晩秋の頃だった。
彼女もあたしも、元気でもないけれど「元気」。おそらく多くの人も。
母を撫でてきた手で、今朝珈琲を淹れた手で、自分をたくさん撫でた。