例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

ポップコーンをほおばって


 手に伝わる感触。ポップコーンのはじける音。

 電車壱本で行けるから、遊園地と言えば其処だった。辺りに森の拡がる街はずれの遊園地。
 ジェットコースターなんて絶対乗れないのに。観覧車に乗りたいと参遍もせがむあたしなのに。

 ひたすらはじけるポップコーン。他に何もなく。そしてあっと云う間に静かになってしまうのに。

 できあがったポップコーンを熱のあるうち全部ほおばった。

 ひたすら得たものは良いとか悪いとかがない。形を変え其れは今もあたしの傍にあり続けている。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

ひねもすのたり


 耳の内がしんとしている。おとなしく壱日家で過ごす。

 寒暖差の激しさについていけなかったのか、アマリリスの葉もガジュマルの葉もブーゲンビリアの葉も・・・、みんな茶色くなってしまった。
 もしかしたら自分の不調も寒暖差からくるものかもしれない、と想うのだが亀たちは元気。

 春ほど眠い季節はなく、ひねもすのたり。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

明日があるなら


 ふらふらになり早々に床に就く。
 拾弐時間眠ったら、きっと戻れる。明日があるなら、きっと珈琲が飲める。

 明日があるならと想うときは、弱っているとき。明日を想いきり想像して眠りにつく。
 どうせなら舞台は伊太利亜。ちょっと生意気な、けれどやさしい男の子とともだちになって、手を引かれ知らない町を歩く。それから彼の自慢のものをいろいろ見せてもらう。
 お礼にあたしが見せるのは、砂漠の薔薇にアンモナイトに自分で撮った寫眞に・・・。

 躯にいつのまにかできてしまっていた大きな風穴。好きなものを並べて飾り今は過ごすまで。
 妙に隠し立てしても仕方ない。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

うす紫の花


 椅子の上には途中で間違えて未だに編みあがっていないセーター。買い物袋からうす紫のスターチスと値引きされた大きな粒の苺を取り出す。冬と春とが入り混じる。
 細く小さなまるい枠。金でも銀でもなく、茶色が気に入っていたのに。つるが歪んでしまった眼鏡にそろそろ限界かとつぶやき、苺の匂いを吸う。カーテンの裾をくすぐる或のふわっとした生ぬるい空気に躯をあずけたいと想う壱方、冬をまだ壊したくないと想いつつ。

 リラにスミレにホトケノザ・・・。
 うす紫の花を買うと云うこと、春が生まれてきていると云うこと。
 子山羊が産まれる夢をまた見られますように、と大きな苺をそのまま口に入れる。

拍手

      郵便箱

頁を戻る頁を捲る

大丈夫


 鉢植えを移動させ、散乱した落ち葉を集め、昨夜から続く強風に玄関前のシャッターを下ろす。帰省する都度に玄関周りの埃や溜まった落ち葉の掃除がたいへんで困っていたけれど、風の強い日にシャッターを下ろせばいいだけのことだった。脇からは吹き込むことなく、夕刻見に行くときれいなものだった。
 少しづつでもわかってきたから大丈夫。

 入浴中、弐度も居眠りし鼻まで湯船に浸かったところで目を覚ます。
 今夜眠れば大丈夫。

 入浴後、父に供えてあった和菓子をひとつ頂戴した。あまいもので笑う。嗚呼、此の子はこんな齢になっても、と父は想っているだろうが、惜しみなく与えてくれたのは彼だった。
 大丈夫、あまいものを食べたから。
 大丈夫と口にすることができずにきたけれど、大丈夫と口にできるようになったので大丈夫。

 大丈夫と口にする都度、足元に落ちる菓子屑のようなものは何だろう。あとからあとから落ちてくる。
 拾えない、と泣いた途端に消えてしまうのだけれど。

拍手

      郵便箱