例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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公園にて


 早朝にみつける霜、卓上のクリスマスツリー、アラン模様のカーディガン、コーンスープの減りの速さ、ひとつ莟の開いたシャコバサボテン、晴れた日は玄関まで差し込んでくるようになった特別まぶしく感じる冬の朝の陽射し。
 とうとうひとつ残らず葉が落ちてしまった銀杏の樹の下を潜り抜けると、遠くに見える山が雪をかぶる姿があった。

 人が少ないとは言え屋根付きのベンチには此の間まで人がいたのに、今日は容易に座れてしまった。
 家に帰ったならインスタントコーヒーに牛乳と、それから氷砂糖を足して飲もうとなんとなしに想う。

 葉を落とし細い枝が現れた樹木。此の姿がより好き。
 細い、細い、細い枝。嗚呼、彼に似ているんだ。あそこに冬の星がとまったらどんなに素敵なことになるだろう。

 冬。閉塞されたような世界でひとつひとつのものが濃厚になっていく。

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初冬


 寒い朝、霧が出ているわけでもないのに今度はユーリ・ノルシュテインの映画を思い出し自転車を出したくなった。手袋をしていないと手がかじかむ。信号をふたつ先に進むと其処はもう町中ではなく、家はまばらで畑が拡がった景色。
 町中と違い景色が白っぽく見える。畑や草むらに霜が下りているからだった。空には端が欠けた白い月。白のタートルネックに頬を埋める。吐息が白くなっているのかはわからない。眼鏡も白くなってきていたから。
 白秋、玄冬、と言うが、自分には冬は白の印象が強い。

 白い静物にできた陰影を壱時間でも弐時間でもみつめたり指でなぞったりしながらまた冬を過ごすのだと想うと、胸がやわらかなもので満ちてくる。此の冬も胸からしんしんとした音が聞こえてくるといい。

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洋梨


 洋梨を買ったのはいつだったろう。食べ頃がよくわからない。
 茶色に染まった姿。頭の先の方がより茶色になっているところがあるのに気付き、皮を剥いてみることにした。
 現れたのは直径壱センチのうす茶の円。傷んだ箇所は其処だけで、残りはひたすらやわらかそうな白い実。香りとあまみが口の中に拡がる。食べ頃を逃さずに済んだ。

 やわらかいものとかたいもの。どちらが好きか問われればかたいものと答えるのに、梨は別。此の秋も洋梨しか口にしていない。
 こんな別が好き。洋梨の不思議な形を想い浮かべては素敵とつぶやく。

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ミルクティー


 カーディガンは袖口と釦付けを残すまでになった。細い絲を使った晩秋用のもので、試しに数回着て来秋まで眠らせることになるだろう。
 長い時間をかけてしまった。それくらいには集中できるようになったととればいいだろうか。其のことに対し何の気持ちも湧いてこない。けれど、形になったものが眼の前にあるのはちょっと嬉しい。
 こんな日はミルクティー。それもうんと濃いミルクティーをつくって飲むのがいい。

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事情


 再起動や復元をしてもパソコンが元に戻らない。アイフォンで調べすることはわかったが、混乱が始まったのか手が震えなかなか先に進めない。たぶん血圧も上がっている。こんなときは先に落ち着くことだ。それがわかっただけでも、と自身に言い聞かせる。
 参日もパソコンにさわらなければ落ち着く筈。誰も知らないあたしの事情。誰かも考慮してくれだのと言わず自身の事情と戦っているだろう。其のやさしい世界に身を置いていたい。
 気付くと机で眠っていた。いちいち処理が追い付かず疲れてしまう脳に苦笑する。

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