例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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洗濯籠


 いっとう初めに購入した籠だったと記憶している。ウォーターヒヤシンスで編まれた籠は使ううちに傷み、最後は洗濯物入れになった。ほつれた部分は麻紐で直したが、充分でない部分がある。
 幾つか籠を足そうと考えていて洗濯物入れも新しくしようと想ったが、今では籠も気軽に購入できない値になっていた。

 傷んだ籠から麻紐をほどき麻紐を結び直す。以前よりきれいに結べるようになっている。まだ暫く使えそうだ。
 場所と大きさと合うものを探すのはなかなか難しい。此の籠が合うとわかったときは嬉しかった。湿った衣類も洗ってから干すまでの間入れておくくらいであれば問題ない。

 縁側に立ち屋根の裏を眺め、或の太くしっかりした樹と樹に木材を打ち付け下に棒を通す金具を取り付けたら洗濯物や布団を干せるようになるだろうか、と想った。
 案はいろいろ想いつく。此の先実際できるようになることは幾つあるだろう。
 欠けた爪。あちこちにできた擦り傷切り傷、痣。不器用な自分さえもいとおしい日々。

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酷暑


 水と氷菓子で膨らんだ腹、重たくなった頭。体温より高くなった気温。肌にまとわりつき離れていかない生温く重量を感じる空気。停止した思考。
 眼だけぎらぎらと鋭くなったような間隔。足元を舞う虫の爪や眼の奥まで見えた気がして目を凝らすと、其れは蜻蛉だった。けれど違う生き物に見える。
 此れはルソーの絵の中の出来事だろうか。それともキリコの絵を覗いている最中なのだろうか。

 イラストと詩の冊子をうす茶のざらざらした用紙で作ったことをふいに思い出す。或の紙で作ったのは正解だったと今も想う。
 其れと対を成すような、夜明けの色、藍色の用紙を用い冊子を作りたいと其の頃想っていた。表紙でなく内表紙に壱枚か弐枚使い、夏と夜明けと水と少年と麦の匂いのする冊子を。

 好きな季節は冬、それから真夏。去年までそう口にできたのに、今年は口を閉じている。
 頭が痛い、気持ち悪い、と亀たちにこぼしながら水槽の水を換える。そうして、今年は卵を産まないね、と大きい方の亀の甲羅を何度もつついた。

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悶々とし


 午前壱時を過ぎた頃だろうか。目を覚ますと隣室でガタガタと大きな音がしていた。亀が目を覚ましているらしく呼んでいるのだとわかったが目がよく開かない。
 夜中に亀が立てる物音でときどき目が覚める。時計を見ると彼が床に就く時刻と一致している。起きずに、おやすみ、と言いまた眠りにつく。
 けれど今夜は違った。右手に強い痒みがあった。母の使っていたステロイド外用薬を思い出し取りに行く。日光皮膚炎にも蕁麻疹にも虫刺されにも効能があるとあったので、いざと云うときに拝借しようと想っていた。
 何故突然痒みが出たのかはわからない。痛みは或る程度我慢できるのに、痒みときたら少しでも痒いと我慢できない。以前月経困難症で文字通り悶絶したことがあるが、痒みはどんな痒みでも悶絶しそうになる。薬が効くまで躯の至る処を掻いた。亀はいつのまにかおとなしくなっていた。
 出掛ける際欠かさずマスクをしていたら鼻や咽や咳の面倒事がなくなって久しい。肌の面倒事もなくならないものだろうか。

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抹茶ラテ


 冷やしてある水か珈琲か緑茶にするか、それとも紅茶を淹れるかレモネードをこしらえるか、咽が渇いた都度冷蔵庫の扉を開けるまで考える。扉を引き、抹茶があったことを思い出す。何かを思い出すときはいつもふいだ。
 スープカップに抹茶と砂糖と数滴の牛乳を入れ抹茶クリイムをこしらえるとアイスクリイムに混ぜてもいいなと云う考えが浮かび冷凍庫を開けるが、あいにくバニラはなかった。ひとつは紅茶のアイスクリイム。もうひとつは紅茶のシャーベット。どちらも紅茶味だったが、どちらも初めて見るもので迷わず籠に入れたことを思い出す。
 バニラは常備しておかないと倖せが逃げてしまうじゃない。ふくれたくなったけれど、最初の予定通り抹茶ラテができあがると丗秒前のことなど忘れてしまう。亀たちと一緒。
 見た目がどうであろうと上手にできなかろうと、自分でこしらえると甘さや濃さが好み通りになるのが嬉しい。にゃああああん。嬉しいとき出る声は何故猫の鳴き声なんだろう。
 嬉しさのお裾分けを亀たちやカエルの人形たちにして、より気分の上がった午后になった。

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夏の風物詩


 蚊に刺された腕が参日経っても痒く、医者にかかろうと想ったところで思い出したのがアレルギー疾患の飲み薬だった。日光アレルギーを抑えるのに飲んでいるが、即効性があり出掛ける前にしか服用していないので想いつかなかった。

 此の家に来たら必ず刺されると想い鉄製の蚊取り線香立てまで購入したのに家の中に蚊はいない。泊まる都度刺されていたのは何だったのだろう。
 刺されそうになるのは決まって玄関の周り。外の水道で夕刻亀たちの水槽を洗う際ハーブの香りのする虫除けスプレーを忘れず躯に吹きかけているのに、蚊は容赦ない。靴下の上からだって刺すときは刺してくる。
 母が使っていたジェット噴射云々火気厳禁危険等級Ⅲなどと記されているスプレー缶は効果があるが、亀たちのすぐ傍で使う勇気はない。

 夕刻になったなら縁台で蚊取り線香を焚こうか、それとも亀たちを家に入れた後翌日の為に缶スプレーを噴射しておこうか、夏の風物詩に頭を悩ませている。

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