例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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ぽんぽん


 ぬるい珈琲。彼の好きなキリマンジャロ。昨日からアイスからホットに替えた。

 縁側のペンキを除く作業は最後の最後になりコツがわかり、壱枚残っていた天板の部分を壱時間掛からず除くことができた。あとは側面と板を支える柱に踏み台。今月中に仕上がりそうな見通し。
 母の茶飲みともだちが度々様子を見に来ては、暇だものね、たいへんだあ、とこちらからすれば勝手と想えることを口にするけれど、今日もいつのまにか服に付けてしまっていたペンキ屑を、何も言わず背後からぽんぽんと叩いて落としていってくれた。本当に勝手な人とやさしい人の違いをそう云うところに感じる。

 朝晩が涼しくなったので、バスタオルでこしらえた寝間着をかぶる。ふわふわの生地のバスタオルでこしらえたら真夏には向かなかった。
 毎日のように頭痛に悩まされ昼寝ばかりしていた夏だったのに、去られてしまうのを嫌がっている。
 壊れてしまったサンダルを塵袋に押し込み、ぽんぽんがなければ今夜は泣いてしまっただろうなと想った。

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内緒の夢


 小さな店で行われた限定のライブらしかった。照明や黒いカウンター席からして普段はバーを営んでいる店だろうか。特にステージの場はなく、客席とに段差がない。後ろの壁に沿い壱列に並べられただけの椅子。
 人に押され気が付くと楽器を抱える彼らの眼の前に自分は立っていた。
 演奏が始まるとあたしはすぐに誰かに腕を引っ張られ躯を持っていかれた。ボーカルの彼にふれそうになる。演奏中だよ、と注意する自分の横で、わざと、と屈託なく笑う彼女は中学生のときのともだちのチョコちゃんだった。
 ひと通り曲が終わり隅の壁にもたれくつろぐ彼ら。其の隣でアンコールを待つ自分。チョコちゃんは何処かに行ってしまい、ひとりになっていた。
 (■■■■■ 割愛 ■■■■■)ふと右を見るとあたしの彼がいて、其の(ボーカルの彼の)様子を見て泪を零していた。其れに吊られたのか、あたしの眼にも泪が溢れてきたのがわかった。

 疲れていたらしく鼾をかいて寝ていた。其れも鼾に驚いて弐度も目を覚ます有様。夢を見ていたことはしっかりと覚えていた。

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曼珠沙華


 今日の面会はバスにした。風が結構あり、帰りは橋を渡っているとき飛ばされるのではないかとひやりした。
 日の落ちていく刻、オレンヂがかった空と草はら、頭を風が抜けていく感覚。橋を渡り終えるまで鳥になった気分で海までの道を探し遊んだ。

 疲れていたけれど、なんとなく地元のものが売られている店に寄ってみたくなり覘いてみた。
 そろそろ閉める時間らしく人が少なくひと目で其れをみつけた。曼珠沙華とうす紫の花の束。うす紫の花の葉は表面がざらざらしていた。ヨメナでなくシオンとかそんなふうに呼ばれている花だろうか。和菓子もと想ったけれど適当なものがなく、栗を買うことにした。

 店を出てうたうのは鼻歌。ストリート・スライダーズの「ありったけのコイン」。「Ah Baby,Baby どのくらいの願いごとが 空の下にぶらさがってる」「どのくらいの泣き顔を 雲の中にかくしてる」。

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暮らしを知り


 同じ環境同じ植物なのにこうも生育が違うのだろうかと首を傾げ、隣同士に置いた弐組の鉢の前で剪定鋏を握る。枯れてしまったのかと想った柘榴の壱鉢の中が新しく出てきた葉できれいな緑に染まっている。柘榴の剪定は冬が良いらしいが、新しく出てきた葉の為に葉の無くなった枝を切り落とす。
 これでいいのかはわからない。けれど猫に接するにも亀に接するにも正解なんてなかった。

 数日前、町の掲示板に、老いを知り病を知り死を知り生を考える(正確でない)、と記された紙が貼られているのを眼にした。自分の言葉に置き換えるなら、暮らしを知り生死を知り他人を知り自身を含む個(生から死までの)を考える、と云うところだろうか。
 折しも彼岸。ブーゲンビリアを壱廻り大きな鉢に植え替えようか。

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秋には竜胆


 壱年経っても弐年経っても変わらない。秋に活けるのは竜胆。
 青い花瓶と竜胆が夕暮れと夜明けを繋ぐ。生憎のくもり空、星はみつからない。なぐさめるように傍で林檎がほほえんでいる。

 最後に残った珈琲を飲み干し、彼に声を掛けてもあいまいな返事をされただけ。今夜も遅くまで起きている気だろう。
 父は父で隣室で同じように今夜も遅くまでテレビのニュース番組を観ている気だろう。

 しんとした家。自分には廣すぎる空間。
 灯りを落としても恐くないのはふたりが起きているから。そして竜胆の或の青い色。

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