柑橘類の匂い
2026, Mar 09
ポンカンの匂いに負けて、皮を湯船に浮かべる。眼を閉じて頭の先まで浸かり、海月のようにゆらゆら揺れ、このまま朽ち果ててもいい気分でいたのに、脚がぴりぴりした刺激を感じ始めてしまう。
オレンヂとメロンはときどき、金柑は食べる都度唇が痺れる。口に入れても平気で、好きだから食べているけれど、パイナップルは弐度と口にしなくなった。
肌がすべすべになると、おもしろがってオレンヂや桃の汁を腕にぬったあとも、ぴりぴりとした刺激があった。
どれが欲しい?、と彼に訊かれ、応えはいつも同じだった。選んだのはオレンヂか檸檬かライムだったエッセンシャルオイルが少し残っているので、卓に置いたはいいものの、そのままにしてある。
匂いは泪を誘うから、ぴりぴりとした刺激を感じるくらいが丁度いいのかもしれない。そう言って躯を冷やしながら彼を想って泣いた。