例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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眼鏡と帽子


 掛けたとき全く違和感がないと想ったら、調節も必要なかった。
 帰宅し幅を測ると106ミリだった。丸い枠だったら此のくらいがいいのだろうが、選ぶときは先ず枠の形に細さに色につるの色を見てしまい、幅のことなど忘れてしまう。今まで掛けていた眼鏡も随分気に入っていたが、想えば幅が大きかったのだろう。made in japanでないのは残念だけれど、致し方無い。
 髪も切り眼鏡も新しくしたので、夏の帽子を棚から下ろしてかぶる。
 〇〇ちゃんは帽子が似合って、と間髪入れずに彼の声を聞く。帽子だけはね、髪も短くしたからかぶりやすくなったし、とあたしは返す。ひとつあった彼の蟹江の眼鏡は彼の友人に譲り渡したけれど、帽子は幾つか残した。並べて終わりになってもいいから、あれも下ろそう。
 今年も冬が行き春が行き梅雨になり、梅雨が終われば夏になる。

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跳ねている


 歩いて参分、食料量販店の中にあるカット屋さんへ行くことにした。今回それほど間が空いてなく、髪を切りに行くのは壱年半ぶりだった。

 長さは肩につくくらいでレイヤーを入れレイヤーから下はとにかく薄くしてほしい、とお願いすると、希望通りにしてくれた。とにかく軽い。そして首のところが持ち上がることなく抑えらえ、横から見ると頭の形がちゃんとまるくなっている。そして薄くしたところは外側へ跳ねている。
 いつも内巻きになって首のところがふくらんで鬱陶しいと話すと、そう云うふうに切って貰ったんじゃ?と言われ、自分でばっさり切っただけなのでと首を振ると、普通は自分で切ると外へ跳ねてしまい内巻きにならないんですよと教えてくれた。

 帰宅し洗髪し、適当に乾かしたあとも内巻きになることなく毛先は外へ向かい跳ねていた。生まれて初めての気がする。残る問題は寝相の悪さだけれど、首下の部分がこのままなら気にしない。
 スキップでもしようか・・・。そんな夜になった。

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黄昏


 西日がまぶしい。午后参時、台所の窓がきいろに染まる。花瓶の中ではオレンヂ色の大きな百合が花開いていた。
 台所がいっとうきれいに見える時間。亀たちを家に入れ、郵便受けを覗く。それから弐階に行き窓を閉め洗濯物を込む。お茶を淹れ椅子に座り、壱日を振り返ったり振り返らなかったり。
 陸時まで続くきいろい窓に描くのは、ひたすら檸檬とオレンヂ。あたしの好きな匂いのする果実。
 最後までつきあうのはせつなく苦しいことだけれど、最後までつきあえるなんてそれほどなく、壱方で其れを倖せと口にし壱方で残酷と口にし笑う。彼だったらもっと素敵に捉えたのだろうか。今になり訊きたいことがたくさんあるの。

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暖簾


 客間から台所と自室へ向かう扉を開放し暖簾を下げる。客人など滅多に来ないものの、廊下がない間取りの家に区切りをつけるには暖簾が最適かと想う。何処でも自分の好きにできる家でだらしなくでなく心地よく過ごすには、区切りは必要だった。
 暖簾と言ってもガーゼのバスタオルを弐枚(商売をしているわけではないので縁起は無視)使ったものだが、金魚の柄が夏向きで丁度いい。
 暖簾をくぐると、其処は自分だけの空間となる。好きなことをして笑うにも、時々やってくる虚無感と過ごすにもいい場所になりつつある。疲れ切ったあたしを花瓶に活けた花がなぐさめる。奥には彼の法名軸が掛かっている。暖簾をくぐれば其処はあたしの帰る場所。

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互いに


 大判のバスタオルが肆枚。値札がついたままのものが壱枚、母が使ったかどうか定かでないものが参枚。自分には大き過ぎるものは使い辛いのに、と溜息を吐くも、いとこはあたし以上に母が使ったものを気にせず使うことを思い出し肆枚とも袋に入れる。そんな関係だから度々見舞いに来てくれるのだろう。
 自分といとこふたりとなら多過ぎることもないだろうと、餅を切りこしらえずっとそのままにしていたあられを揚げる。夫も父も此れが好きだった。ついでに玉葱をリング揚げにする。其れを保存容器に入れ、タオルを入れた袋と一緒に客間の卓に置きいとこを待った。
 ひとりでは気が乗らないことも、ひとりふたりと想うと動き出す。

 適切な距離感とあっさりしたつきあい。親密である必要はない。礼節を軽んじることがなければいいのだと想う。大切なのは、互いの考えが一致してしていることだけれど。

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