例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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末摘花


 汗をかく分、自転車で丗伍分の道のりがきつくなった。陸時に寝てしまおうと想ったのに、落ち着かず風呂上がりだと云うのに家具を移動させる始末。
 月曜日。花瓶に入ったのは末摘花。今朝食べ終えて空になった硝子の保存容器は口を開けたまま。玉葱もズッキーニもじっとしている。
 明日履こうと想っている靴をきれいにそろえたけれど、あたしの頭は末摘花のように棘を出してしまっている。

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深い処まで


 昨夜も彼の夢を見た。
 記しておくほどでない彼の夢。時々見ては、大丈夫を口にし、夜明け以外の空なんて滅多に見ないあたしが朝の空の色を眺める。

 行きたい施設があると言うと、彼が一緒に行ってくれた。其処は想ったより遠い処にあった。然も改装中で中に入ることはできなかった。疲れてふくれて無言で下を向き歩いているあたしの横で、此の町が気に入ったからまた来ようかな、と彼は言う。
 それだけの夢。それだけなのに彼らしさが表れていると想うと、泣いてしまう。

 浅い処で泳いでいるような自分。上辺など気にせず深い処までいきたい。

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梅雨


 降り続く雨に梅雨を想う。外は何処も彼処も濡れている。
 こんな日は、と思い切って書架の位置を変えてみる。台所と自室の間には壁がなく、腰の高さの間仕切りの中央に壱番高さのある書架を置き互いの目隠しにしていたが、ひとりの今は其の必要がない。
 中央を開けると全体がすっきりして見える。端に置いた書架と整理箪笥の側面に突っ張り棒を設置し、お気に入りだったたんぽぽの刺繍のカフェカーテンを下げると古い家具と乾燥花を置いた部屋に合うので笑う。
 彼が選んだベンチ付きの胡桃の卓に珈琲セットと墨色の敷物を合わせ、彼の部屋に置いていた引き戸式の黒い棚を隅に置き、ギターを飾り(ケースに入れたままだけれど)、男の子のような部屋を作っているつもりがずれてしまっている。母親のスペースはそれなりに上品で可愛らしくと想うものの、籐のチェストと鏡台を置いているくらいで大差ない。
 聞こえるのは雨の音。今はこれでいい。明日はまた変わるかもしれない。

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紫陽花のブローチ


 乾燥花になりくしゃくしゃになった紫陽花をブローチにしてみる。鳶色の絲で編み黒いリボンをつけた帽子に添えると、帽子の鳶色がひきたちきれいに見えた。

 布を染め紫陽花にしたブローチを彼に買ってもらったことがあったが、似合う服を持ってなく、また其れが似合う雰囲気もあたしは持ち合わせていなかった。壱度もつけたことはないものの、今でも棚の上に飾っている。
 似合う似合わないもなく、好きかどうかで生きるようになった今、今度ワンピースかスカートを買ったらつけようと決めている。なかなか買えないようだったら、鞄につけてもいいかな・・・。

 夢を描いて(夢とも呼べないような小さなものばかりだけれど)実行して、彼にどう?と見せては笑う。彼は彼で今も夜中にごそごそやっているだろう。
 歳月が過ぎても好きなものはそうそう変わらない。

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眼鏡と帽子


 掛けたとき全く違和感がないと想ったら、調節も必要なかった。
 帰宅し幅を測ると106ミリだった。丸い枠だったら此のくらいがいいのだろうが、選ぶときは先ず枠の形に細さに色につるの色を見てしまい、幅のことなど忘れてしまう。今まで掛けていた眼鏡も随分気に入っていたが、想えば幅が大きかったのだろう。made in japanでないのは残念だけれど、致し方無い。
 髪も切り眼鏡も新しくしたので、夏の帽子を棚から下ろしてかぶる。
 〇〇ちゃんは帽子が似合って、と間髪入れずに彼の声を聞く。帽子だけはね、髪も短くしたからかぶりやすくなったし、とあたしは返す。ひとつあった彼の蟹江の眼鏡は彼の友人に譲り渡したけれど、帽子は幾つか残した。並べて終わりになってもいいから、あれも下ろそう。
 今年も冬が行き春が行き梅雨になり、梅雨が終われば夏になる。

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